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人生において、“東京暮らし”がベストなのだろうか?
大卒初任給が30万を超える会社も出てきているようだが、一方で中高年の社員には辞めてほしいというのが会社側の本音なのかもしれない。年齢が高いと給与水準も上がるし、管理職にとっては年上の部下は扱いにくいもの――。その業務はAIで代替できるかもしれない。そんな針の筵(むしろ)の状況で働き続けても楽しくはないだろう。
しかし、転職したとしても、いまの給与の半分も貰えない可能性もある。オジサン世代だけでなく、若い人も20年後、30年後には同じ運命が待っているかもしれないのだ……。
仕事の問題だけではない。いまの住まいが賃貸の場合、これからどうなるのだろうか? いまの物件に将来も住み続けられる経済力はあるのだろうか? 将来安い物件に借り替えるとして、そのとき高齢者相手に貸してくれるのだろうか? 東京都心部ではマンションの平均価格が1億円を超えている。いまから新しく都内で住居を購入するのは難しいだろう。
老後も生計を立てられる見通しがしっかりできているのならなんの問題もないのだが、そうでなければいますぐにでも将来のライフプランを考えるべきだ。そうでないとどこかで生活費が尽きる「老後破綻」となり、日本という国に生まれたことを呪いながら老いて死を待つだけの人生が待っている。
どんなことでもそうなのだが、プランを立てるときにはあらゆる可能性を模索し、複数のプランを想定し、そのなかで実現可能性や自分の適性を考えて最善なものを選ぶべきだ。そして、ライフプラン作成を先延ばしにすればするほど選択肢は減る。
人生の後半の生き方として、自身の郷里に戻る「Uターン」、もしくは住んだことのない土地に移住する「Iターン」というのも視野に入れてはどうだろうか。しかし、企業と同じように、自治体もできれば若い人に来てほしいだろう。働ける期間も長いし、子どもを産んで育ててくれれば、地域の活性化や人口減対策にも貢献してくれる。もちろん、40歳以降でも決してダメなわけではないのだが。
では地方移住を選択することで、その後にどんな未来が待っているのだろうか。実際に40歳過ぎて郷里にUターンした男性のその後を書いていきたい。
転職に失敗しUターンしたAさんが11年後に始めた“新事業”
Aさん(男性・55歳独身)は41歳のときに北陸地方にある郷里に戻ってきた。大学卒業後に、国際系通信キャリアに勤めていた際の最大年収は850万円ほど。その後、勤めていた会社を辞めてIT関連のスタートアップに参画した。しかし、社長ががんになり計画は頓挫。もう事業の立ち上げが絶望的とわかった時点で転職活動を行ったが、いまと違い求人は少なく、そこに東日本大震災が発生――。
しばらくはアルバイトで食いつないでいたが、職が見つかる。地元で事業をしていた父親の誘いもあり郷里にUターンした。
帰郷後、一応地元の求人案件を探してみたが、東京と比べると案件自体がかなり少ないうえに、給与水準は東京の頃の半分にも満たなかった。そのまま父親の事業を手伝う。しかし、仕事を始めてから2年経たぬうちに業績は悪化。一応父親から給料は出たのだが、そこから国民年金と健康保険料、そして家に入れる生活費を引くとわずかしか残らない。実家暮らしなので衣食住は確保できたが、結婚して世帯を構えるなど夢のまた夢だった。
地元で友だちができたし、休日にはマラソン大会に出たり山登りに行ったりしてプライベートはそれなりに楽しかった。その一方で仕事についてはずっと不安を抱え続けた。8年後、父親が病気になり事業を引き継ぐ。そこにコロナ禍がやってきて売上はさらに激減。将来性が見込めないため、別の事業の立ち上げを模索するもなかなかうまくいかない。
以前からゲストハウス経営に興味があったので、副業として民泊で宿を始めることにした。実家から車で1時間の所で空き家になっていた民家を借り、2022年の末に開業。実家との二拠点生活で平日は本業をこなし、週末はほぼ宿で過ごす日々だ。
収入は以前からの事業を含めても東京で働いていたころの約半分。そのなかから色々な経費、食事提供をしているので食材の仕入れ、個人事業主なので社会保険料を全額払わねばならない。経済的にはカツカツで、毎日クラウド会計ソフトを使って収支状況と見通しをチェックしている。
もちろん結婚などできるわけがないし、老後の心配をするどころではない……というか、国民年金なので貰える年金は雀の涙。この先もずっと働き続けることになるのだろう。
