(※写真はイメージです/PIXTA)
40代の再就職…厳しい現実
「エージェントに登録しましたが、紹介される案件は、給与が大幅にダウンするものばかり。 『45歳』という年齢の壁は、想像以上に厚かった。 『マネジメント経験は豊富ですが、企業が今求めているのは、より専門的なAIのスキルか、もっと安く雇える若手です』とハッキリ言われました」
面接に進んでも、年下の人事担当者から「なぜ、業績の良い会社を辞めたのですか?」と、まるで責めるように聞かれることもしばしばだったと言います。
数ヵ月の苦しい就職活動の末、斎藤さんはようやく1社の内定を得ました。 業種はまったく異なる、中堅の製造業。募集していたのは、社内のシステム管理を担う「社内SE」のポジションでした。
「給与は、月収で15万円近く下がりました。ですが、背に腹は代えられません。もう一度、0から頑張るしかないと」
しかし、斎藤さんを待っていたのは、「さらなる受難」でした。
「新しい職場は、良くも悪くも旧態依然とした日本企業でした。 IT担当は私ひとりですが、実態は『何でも屋』。パソコンの不具合対応から、社内資料の印刷まで。 前の会社では管理職でしたが、今は平社員です」
屈辱的だったのは、周囲の視線だったと言います。 個人情報の管理など二の次で、いつの間にか斎藤さん情報が漏れていたのです。 『あの人、前の会社をリストラされたらしい』『45歳で平社員か』と陰口を叩かれているのが伝わってきたといいます。
「業績が悪化してクビになったなら、自分の力不足だと諦めもつきます。 でも、あれだけ『業績好調だ』『皆のおかげだ』と言っていた会社から、スキルが古いという理由で切り捨てられた。 今も、何が起こったのか整理がつきません。頑張りが足りなかったのか、運が悪かった……。 もう、どこか行きたいです」
「黒字リストラ」という現実…突然の「退職勧奨」、どうする?
斎藤さんのような「黒字リストラ」の事例は、決して対岸の火事ではありません。
東京商工リサーチが2025年10月に発表した調査によると、2023年1月~9月に早期・希望退職者を募集した上場企業は34社に上りました。 注目すべきは、そのうち最終損益が「黒字」だった企業が22社と、全体の6割以上(64.7%)を占めている点です。
かつてのリストラは、赤字転落や経営危機を回避するための「守り」の施策でした。 しかし現在は、斎藤さんのケースのように、好業績であっても、将来の市場変化(AI化、DX推進など)を見据え、事業構造や人員構成を最適化するための「攻めのリストラ」が主流となりつつあります。
特にターゲットになりやすいのが、斎藤さんのような40代・50代のミドル層です。 厚生労働省『職業安定業務統計(令和5年平均)』を見ても、年齢の壁は明らかです。 有効求人倍率(正社員)は、25~34歳が1.23倍であるのに対し、45~54歳では1.00倍、55~59歳では0.90倍と、年齢が上がるにつれて求職者にとって厳しい状況がうかがえます。
人件費が高く、一方で最新スキルのキャッチアップが遅れていると見なされやすいミドル層が、事業再編の際に真っ先に候補に挙がってしまうのです。