(※写真はイメージです/PIXTA)
月15万円を投資に回す実家暮らし独身男性
「今はお金を使う時期じゃない。未来の自由のために耐えるんだと自分に言い聞かせています」
実家から都内の会社に通勤しているYさん(27歳)は、入社以来、徹底した節約生活を続けています。毎月の手取りは約24万円。そのなかから生活費として3万円を実家に入れ、残ったお金から毎月15万円を、NISAを活用した投資信託の積み立てに回しています。
Yさんをそこまで駆り立てるのは、経済的自立と早期リタイアを目指す「FIRE」への強い憧れでした。
「定年まで毎日会社で働き続けるなんて考えられません」
実家暮らしという現在の状況なら家賃や食費がかからない分、投資資金を最大化できます。同期たちがボーナスで車や時計を買うのを横目に、Yさんはひたすらインデックス投資にお金を回してきました。
口座の資産は増えるが、“目に見えない何か”が減る感覚
投資資金を確保するために、娯楽にもほとんどお金を使わず、交際費も月1万円に制限しています。
「お金がかかるから、恋人を作ることも諦めています。証券口座のアプリで資産を確認するのが楽しみです」
平日は職場と家の往復、休日はお金を使わないように自室でネットゲームや動画を見て過ごす日々。気がつけば、仕事以外の話題で気兼ねなく話せる相手はほとんどいなくなっていました。そこでYさんはふと気づきます。
「ふとした瞬間に、虚無感に襲われるのが本音です……」
40代でFIREを達成して自由な時間とお金を手に入れたとしても、一緒に遊んでくれる友達がいなかったら何をして過ごせばいいのか。
「20代という貴重な時間を、お金を貯めるためだけに使うのは正解なのか?」
未来の自由を買うために始めた投資が、現在の自分の行動を制限してしまっている。順調に増え続ける資産額とは裏腹に、Yさんは心の豊かさが失われていくのを感じています。
将来への備えと現在の充実感、見直したい投資との距離感
Yさんのように、投資資金を捻出するために現在の生活を切り詰め、結果として人間関係や経験の機会を失ってしまうことは、近年問題視されています。金融庁の「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点(速報値))」によれば、NISA口座数は前年比10.4%増の約2,825万口座にのぼり、非課税制度を活用した資産形成は若年層にも定着しました。
その裏で、若者たちの消費行動には明らかな変化が起きています。SMBCコンシューマーファイナンス株式会社の「20代の金銭感覚についての意識調査 2025」によると、20代の貯蓄額の平均は69万円と前回より13万円増加しています。
しかし一方で、趣味や遊びに使う金額は平均1万6,827円と2,200円減少しました。毎月自由に使えるお金も3万4,605円と2,491円減っており、娯楽や交際費を極力我慢して将来へ備える傾向が明らかになっています。
未来のための資産形成は生きていくうえで欠かせませんが、今しか築けない人間関係や自己投資の機会を絶ってしまうと、あとになって後悔を生む恐れがあります。
将来への備えと現在の充実感、どちらか一方に偏るのではなく、自分の生活が苦しくならない範囲で長く投資と付き合っていく視点が、今の若者には求められているといえるでしょう。
[参考資料]
金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点(速報値))」
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社「20代の金銭感覚についての意識調査 2025」