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業績好調のIT企業で…突然の「チャット呼び出し」
「業績は好調。今期も過去最高益だと聞いていました。だから、まったく予想していませんでした」
都内大手IT企業に勤務していた斎藤誠さん(45歳・仮名)。 斎藤さんは大学卒業後、この会社一筋で、プロジェクトマネージャーとしてチームを率い、月収は52万円、賞与を含めた年収は約800万円。 順風満帆なサラリーマン人生を歩んでいました。
その日も、山積みのタスクを片付けていた午後。社内チャットが静かに点滅しました。 相手は人事部。「今後のキャリアについて、少しお時間いただけますか」という短い文面。 「最初は、新しいプロジェクトの打診か、昇進の話かと思ったくらいです」。しかし、通されたのは、普段は使われない小さな会議室。 そこには、人事部長と、斎藤さんの直属の上司である事業部長が硬い表情で座っていました。
「『単刀直入に言います。斎藤さんには、早期退職を推奨したい』と言われて……頭が真っ白になりました」
業績は好調なはず。自分のチームの評価も悪くない。なぜ自分がリストラに——。
「『なぜですか』と食い下がりました。 すると、人事部長は『会社の将来的な成長のため、事業構造を再編する必要がある』『斎藤さんのスキルが、我々が目指す新しいDX戦略と完全に合致するとは言い難い』『さらなる成長のために、人員の若返りを図りたい』などと……」
いわゆる「黒字リストラ」でした。 会社が傾いているならまだしも、業績が良いなかでの「戦力外通告」。斎藤さんのプライドは深く傷つけられました。
「最初は固辞していたのですが、連日、面談が設定されました。 『これは解雇ではない、あくまで勧奨だ』と繰り返されましたが、事実上の圧力です。 『このまま会社に残っても、君が活躍できるポストは用意できない』とまで言われました。 隣に座っていた上司は、ずっと目を伏せたままでした」
住宅ローンも、まだ大学生の子どもの学費もある。 会社と争う気力も、敵対的な環境に残り続ける精神力も、斎藤さんには残されていませんでした。
「結局、数ヵ月分の割増退職金と引き換えに、退職届にサインしました。45歳。こんなにあっけなくキャリアが終わるとは思っていませんでした」
手にした退職金は800万円。勤続年数が20年強でしかなかったことを考えると十分だったかもしれません。 斎藤さんはすぐに再就職活動を開始。IT業界でのマネジメント経験。すぐに次が見つかるだろうと高をくくっていました。 しかし、現実は厳しいものでした。