(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●為替市場では高市トレードを主因とした円安が進行、円は主要33通貨に対して全面安の展開に。

●高市氏の財政・金融政策を巡る発言に、市場は円安加速の循環をある程度見込んだ可能性も。

●ただ、投機的な動きも相応に反映か、さらに円安が進行した場合は財務省の動きが注目されよう。

為替市場では高市トレードを主因とした円安が進行、円は主要33通貨に対して全面安の展開に

ドル円は今週に入り、急速にドル高・円安が進行し、10月8日の外国為替市場では、一時1ドル=153円に迫る展開となりました(153円台に乗せたとの報道もあり)。財政拡張・金融緩和志向が強いとされる高市早苗氏が、10月4日の自民党総裁選挙で勝利したことを受けて円を売る動きが強まっており、いわゆる「高市トレード」が円安加速の主因と推測されます。

 

市場では日銀による早期利上げ観測が後退し、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げが今月実施される確率は、10月3日時点で56.5%まで織り込まれていましたが、8日時点では25.0%へ低下しています(図表1)。このような状況のなか、円は幅広い通貨に対して減価が進み、10月3日から8日までの期間、主要33通貨に対し、全面安となっています。

 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]市場が織り込む日銀の利上げ確率 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

高市氏の財政・金融政策を巡る発言に、市場は円安加速の循環をある程度見込んだ可能性も

高市氏は総裁選後の記者会見で、物価高対策に力を注ぐ考えを示しており、これが市場で財政拡張方針として意識されたように思われます。また、コストプッシュ型のインフレを放置し、デフレではなくなったと安心するのは早い、ディマンドプル型のインフレがベスト、そういう状態まで日銀とのコミュニケーションを密にとっていく、旨の発言をしており、これらが早期利上げ観測の後退につながったとみられます。

 

なお、「財政拡張・利上げ先送り」の見方から「円安加速」となれば、「輸入物価上昇」で「コストプッシュ型のインフレ圧力」が強まる恐れもあります。この場合、高市氏の発言を踏まえると、一段の「財政拡張と利上げ先送り」の見方につながりやすく、その結果、さらなる「円安加速」という循環が生じることも考えられます。足元の大幅な円安進行は、このような状況をある程度、見込んだ面もあるように思われます。

ただ、投機的な動きも相応に反映か、さらに円安が進行した場合は財務省の動きが注目されよう

ただ、改めて図表1をみると、年内12月や来年1月の利上げ確率が大きく低下した訳ではないため、円安加速は相応に投機的な動きを反映している可能性が高いと考えます。実際、投機筋にとっては、新政権発足がやや見通しにくくなっている現状、現政権が円安進行に対しどのような認識を示すのか、試しやすい局面になっているとも考えられます。日本では、為替政策を管轄するのは財務省であり、為替介入の実施を決めるのは財務大臣です。

 

2024年は急速な円安の進行に対し、為替介入が実施されましたが、当時、介入水準とみられたのは157円台、159円台、161円台などでした。財務省の要人発言などから為替介入の可能性を考えた場合、図表2のようにまとめられ、介入判断の際は、為替レートの特定の水準だけでなく、変動の大きさ(ボラティリティ)や速度も注視するとみられます。そのため、ここからさらに円安が進行した場合、財務省の動きが注目されるとみています。

 

(出所)三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]要人発言などにみる為替介入の可能性 (出所)三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『高市トレードで円安が加速~ここからは財務省の動きに注目【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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