オーナーを苦しめる“告知事項”とその義務とは
ここでは、【告知事項】とは何かということをさらに掘り下げていきたいと思います。
告知事項とは、物件や部屋を売却や賃貸する際に、売主から買主、もしくは貸主から借主へ事前に伝えておかなければならない重要な内容のことです。それは売買契約や賃貸借契約を締結する際に重要事項説明書という書面にて正式に伝えられるのですが、オーナーとなってこれから物件運用を開始したり、その部屋で生活を始めたりするのに必要な情報や注意事項が記載されているためにその内容は多岐に渡ります。
しかし多岐に渡るとはいえ、どの物件にも当てはまる内容については定型文のような形となっているものも多いため、特に注意するべき点としては、その部屋や建物、地域特有の事項に関する詳細となります。
ただ困ったことに、重要事項説明書も契約書と同様に書面いっぱいに細かい字がビッシリと書かれていたり、難しい言葉や難解な言い回しを読み合わせたりすることが多いため、面倒臭さが勝ってしまい、しっかりと理解されないまま承諾のサインを書いてしまうケースも散見されます。この部分を読み飛ばしてしまうと、物件運用やこれからの生活に支障がでる可能性もあるため、ぜひしっかりと内容についてご理解いただくことをおすすめします。
事故物件ではないけれども告知をする場合とは
例えば賃貸物件において、事故物件ではないとしても告知をするケースがあります。告知をするかどうかの判断については、入居者に心理的瑕疵が発生するかどうかがその基準となります。
自殺、殺人、腐敗などが発生し特殊清掃を実施した孤独死については心理的瑕疵と共に告知“義務”も発生するため、必ず入居者にお伝えするわけですが、次のような場合はどうでしょう。
ある部屋に若いご夫婦が住んでいました。普段は仲の良い2人なのですが、その日は些細なことがきっかけで口論となり、ついには大きなケンカとなってしまいました。その中でつい、ご主人は正面に立つ奥様の肩を押してしまったのです。バランスを崩す奥様。倒れた先には家具があり頭を打ってしまいました。身動きしない奥様を見たご主人はすぐに救急車を呼びます。救急車で病院に運ばれ、懸命な治療を受けられましたが、その甲斐なく残念ながら奥様は息を引き取られてしまいました。
この部屋を含むアパートのオーナーから質問を受けました。「残念ながら奥様は亡くなられてしまったけれど、亡くなられたのは病院であり、室内ではないから告知義務は発生しないということで大丈夫だよね?」
難しい質問です。この事件が起きたときには現在のようなガイドラインはありませんでした。そのため会社内の履歴や弁護士、有識者に意見をいただき判断することになりました。
結論としては、【告知をする必要がある】としました。確かにオーナーの言うことも最もなのですが、実はある事情によりその部屋の出来事は近隣住人の方々のよく知るところとなってしまったのです。
そのため、何も知らせずにその部屋で生活を始めた入居者が、どこかでその事件のことを知った場合、たとえその室内で人は亡くなっていないとしても、そのきっかけとなった場所ということで心理的瑕疵が発生する可能性があると判断したためです。このように、事故物件ではないけれども告知をする必要のある部屋は存在するのです。
