(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●政策金利は据え置きへ、市場は次の利上げ時期をにらみ植田総裁の記者会見での発言に注目。

●市場で年内の利上げ観測がくすぶるも、植田総裁は利上げを急がず、慎重な姿勢を示す可能性。

●弊社は来年1月の利上げ予想を維持、いくつか条件がそろえば年内利上げも、ただ早くて12月か。

政策金利は据え置きへ、市場は次の利上げ時期をにらみ植田総裁の記者会見での発言に注目

日銀は9月18日、19日に金融政策決定会合を開催します。弊社は無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)について、大方の見方と同じく、5会合連続の据え置きを予想しています。市場の関心は引き続き日銀の次の利上げ時期にあり、植田和男総裁の記者会見で、何らかの手掛かりが示されるか否かに注目が集まっています。以下、この点について整理します。

 

直近では、中川順子審議委員が8月28日に、氷見野良三副総裁が9月2日に、それぞれ講演を行っており、両名とも米関税政策を巡る不確実性は高い状態が続いているとの認識を示しました(図表1)。金融政策の運営については、日銀の経済・物価見通しが実現していけば、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と、ともに述べており、日銀の従来の見解に変化がないことが確認されました。

 

(出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]中川審議委員と氷見野副総裁の主な発言 (出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

市場で年内の利上げ観測がくすぶるも、植田総裁は利上げを急がず、慎重な姿勢を示す可能性

その後、9月4日にトランプ米大統領が日米間の関税合意を履行する大統領令に署名し、また、日本時間9月9日の夕方には米ブルームバーグ通信が、日銀関係者の話として、政局の不透明感が強まるなかでも、年内利上げの可能性を排除しないと報じました。これらの動きを受け、市場が織り込む12月会合までの25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ確率は足元で上昇しています(図表2)。

 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]市場が織り込む日銀の利上げ確率 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

市場で年内の利上げ観測がくすぶるなか、植田総裁の発言で注目すべき点は主に以下の内容が考えられます。すなわち、①米通商政策の不確実性の低下度合い、②日銀の経済・物価見通しの確度、③賃金と物価が相互にプラスに影響し合うメカニズムの継続、の3点です。おそらく、①は「幾分低下もなお高い」、②は「少し高まった」、③は「継続するか丁寧に確認したい」とし、利上げを急がず、慎重な姿勢を示す可能性が高いと思われます。

弊社は来年1月の利上げ予想を維持、いくつか条件がそろえば年内利上げも、ただ早くて12月か

氷見野副総裁は前述の講演で、米関税政策の経済への影響は、「これから及んでくる、というのが基本的な見方」と述べており、弊社も今年後半の国内景気は足踏みすると予想しています。また、国内の政局も不透明感が強く、中川審議委員は前述の講演で、政策が後手に回るビハインド・ザ・カーブのリスクについて、「今の時点でそれほど高くはない」と述べており、日銀は当面、国内外の経済や物価情勢の分析を継続するものと考えられます。

 

日銀の金融政策について、弊社は来年1月に25bpの利上げを行うとの予想を維持しています。なお、10月1日の全国企業短期経済観測調査(短観)や10月6日の支店長会議を通じ、日銀の経済・物価見通しの確度が一段と高まり、国内の政局が早期に安定し、米景気の冷え込み回避が確認されるなどの条件がそろえば、年内利上げの公算は大きくなると思われますが、それでも利上げ時期は早くても12月とみています。

 

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2025年9月日銀政策会合プレビュー~今回の注目点を整理する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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