半数が「転職意向」 職場環境が定着左右
組織変革コンサルティングのスコラ・コンサルト(東京)は、従業員100人以上の企業に勤める社員・管理職2,106人を対象に、転職や働き方に関する意識調査を実施した。
それによると、全体の半数が「将来的に転職を考えている」と回答し、職場への定着志向と転職意向が拮抗する現状が明らかになった。働き方改革や人材流動化の進展を背景に、従業員の意識が大きく変化している実態を示している。
転職経験者の6割が「今の会社の方が良い」
過去に転職経験のある人に「前職と比べた満足度」を尋ねたところ、61.8%が「今の会社の方が良い」と回答した。改善を実感した点としては「残業の少なさ」「給与・福利厚生」「人間関係」が上位に挙がった。一方、「前の会社の方が良かった」とした人は1割に満たず、転職がプラスに作用するケースが目立った。
自由回答でも「休日が取りやすくなった」「給与が上がった」「上司との関係が改善した」といった声が寄せられ、働きやすさや待遇改善を理由に転職を肯定的に捉える意見が多かった。
若い世代と女性に強い転職志向
調査によると、転職意向を持つ人は全体で50.2%。このうち「3年未満に転職したい」と答えた人は20.3%に上り、「10年以内」とした人を含めると半数を超える。年齢別では20代から40代で転職意向が特に高く、性別では女性が男性を上回った。育児とキャリア形成の両立を重視する傾向が背景にあるとみられる。
一方、転職を考えていない人ほど「残業が少ない」「休みがとりやすい」といった働きやすさや、「上司や同僚との良好な関係」「裁量の大きさ」に満足していた。人材が長く職場に定着するには、給与水準だけでなく、日常的な職場環境や人間関係が大きく影響していることがうかがえる。
1割超が「リベンジ退職」を経験
調査では、全体の11.8%が退職時に会社へ報復的な行動をとる「リベンジ退職」を経験したと回答した。これは退職時に不満を爆発させ、データ消去や悪評の拡散といった行為に及ぶもので、組織に深刻な影響を及ぼす恐れがある。企業にとっては人材流出に加えて新たなリスク要因となっている。
今回の調査は、転職が一般的なキャリアの選択肢として広がる一方で、企業には「社員を引き留める職場づくり」と「円滑な離職対応」という二重の課題があることを示している。人手不足が続くなか、休暇制度や柔軟な働き方の整備、上司との関係性向上など、日常的な環境改善が社員の定着につながるとみられる。
スコラ・コンサルトは「社員の長期定着には、給与や休みのとりやすさのほかに人間関係も影響していることがわかった。転職のタイプの中で多い『ブラック逃避型』や『人間関係ストレス型』の退職をされないために、まず関係性づくりに取り組むことは必須といえる」としている。
