東京の異常な家賃の高さに嫌気がさし、地方移住を決意する人は少なくありません。月収28万円の32歳男性もその一人。地元での安い家賃に惹かれUターンした彼を待っていたのは、思い描いていたような余裕のある生活ではありませんでした。「家賃さえ安ければ生活は楽になる」という思い込み。その致命的な勘違いの先にあった後悔の念に迫ります。
愚かでした…〈月収28万円〉32歳サラリーマン、東京のバカ高い家賃から逃げて地元に帰った男が嘆く「たった1つの致命的な勘違い」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「東京の家賃は異常だ」…Uターンを決意した32歳の思い

地方から上京し、都内のIT企業で営業職として働いていた佐藤拓也さん(32歳・仮名)。当時の月収は28万円。日本の平均から見れば決して低い額ではありませんが、東京で暮らす若者にとっては「余裕のある生活」とは程遠いものでした。

 

「一番の悩みは、やはり家賃でした。埼玉との県境に近い23区の端っこで、築20年のワンルーム。それでも家賃は8万5,000円。給料の手取りが22万円くらいだったので、毎月決まって出ていく固定費としては、あまりにも大きな負担でした」

 

当時の心境を、佐藤さんはそう振り返ります。都心で働く友人たちと比べれば安い家賃でしたが、それでも収入に占める住居費の割合は無視できないレベル。食費や交際費を切り詰め、趣味に使うお金もほとんどありませんでした。

 

「給料の3分の1以上が、ただ寝るだけの場所に消えていく。将来のための貯金も思うようにできず、このままでいいのかと漠然とした不安を常に抱えていました。東京での生活は刺激的でしたが、それ以上に経済的なプレッシャーが大きかったんです」

 

そんな佐藤さんの心に変化が訪れたのは、地元である東北に帰省したときのことでした。両親や旧友と過ごす穏やかな時間。そして何より、東京とは比べ物にならない家賃の安さに衝撃を受けました。

 

「地元の友人は、同じくらいの年齢で家族と暮らしているのに、3LDKの駐車場付きアパートの家賃が7万円だと聞いて、愕然としました。自分は20平米ほどのワンルームで8万5,000円。一体何のために東京で我慢しているんだろうと、急にバカバカしくなってしまったんです」

 

この帰省をきっかけに、佐藤さんの心は地元へのUターンに大きく傾きます。幸いにも、地元の中堅企業で営業職の募集があり、これまでのキャリアを活かせると考え応募。無事に内定を得ることができました。

 

提示された給与は現状と変わらない月収28万円。現状と変わらないなら、地元に帰らない理由がありません。

 

「借りたのは、市内の中心部で、前より少し広い2LDKの物件が駐車場込みで7万円でした。家賃が安くなるうえ、広くなって、さらに駐車場付き。これでやっと、カツカツの生活から抜け出せる。車を買って、週末は少し遠くまでドライブでも……なんて、バラ色の未来を想像していました」

 

佐藤さんは希望に胸を膨らませ、学生時代から数えて14年間暮らした東京を後にします。