近年、高齢者世帯を中心に「家を売ってもそのまま住み続けられる」というリースバックが注目を集めています。老後資金の不安を解消する選択肢として紹介されることが多い制度ですが、安易な契約によって「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。ある夫婦のケースを見ていきます。
「一生住めます」は嘘だったの? 〈年金25万円・70代夫婦〉、リースバックの罠にハマり絶望。マイホーム売却後の破産危機に悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

毎月15万円の支払いに愕然……「わが家」が「賃貸」に変わった日

関西地方の静かな住宅街に建つ築35年の戸建て。ここに住む田中徹さん(72歳・仮名)と妻の和子さん(68歳・仮名)は、3年前にリースバックを利用しました。

 

「当時は、これで老後の心配がなくなると思いました。子どもたちは独立して東京にいますし、この家を相続させる予定もなかったので」と、徹さんは当時の心境を語ります。

 

リースバック利用のきっかけは、和子さんの体調不良と、住まいの維持費の増大でした。貯蓄は心細く、夫婦で月25万円ほどの年金だけでは、今後の医療費やメンテナンス代を賄うのは難しい。そう考えていた矢先、テレビCMで目にしたのが「リースバック」という言葉でした。

 

相談した不動産会社からは、自宅の売却価格として1,800万円を提示されました。住宅ローンは完済していたため、その全額が手元に入ります。引越しの必要もなく、固定資産税の支払いもなくなると聞き、夫婦は「これしかない」と契約を交わしました。

 

しかし、生活が始まってすぐに暗雲が立ち込めます。設定された月額賃料は15万円。近隣の賃貸マンションの相場よりも明らかに割高でした。

 

「固定資産税がなくなるとはいえ、年間180万円の支払いです。売却代金として手にした1,800万円は、単純計算で10年経てばなくなってしまう。固定資産税を払っていたころのほうが、ずっと楽だったことに気づいたのは、契約書に判をついた後でした」

 

さらに、追い打ちをかけたのが契約更新の問題です。当初、会社側からは「ずっと住み続けられます」と口頭で説明を受けていたものの、実際の契約書は2年ごとの「定期借家契約」になっていました。期間満了時に会社側が合意しなければ、強制的に退去しなければなりません。

 

「今さら引越しなんて考えられません。でも、あと数年して資金が底を突いたとき、私たちはどこへ行けばいいのか。家を売ったお金を切り崩して家賃を払う毎日に、生きた心地がしません」