(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●EPSが主導する株高は、好業績を反映した株高、PERが主導する株高は、期待を反映した株高。

●日経平均は足元堅調に推移しているが、EPSとPERをみると、PER主導によるところが大きい状況。

●日経平均が過熱感から短期的に調整しても2012年以降の上昇トレンドは継続の可能性が高い。

EPSが主導する株高は、好業績を反映した株高、PERが主導する株高は、期待を反映した株高

「EPS(Earnings Per Share)」とは「1株あたり利益」のことで、一般に純利益を発行済み株式数で割って算出されます。「PER(Price Earnings Ratio)」とは「株価収益率」のことで、株価を1株あたり利益で割って算出されます。PERは、株価が1株あたり利益の何倍まで買われているかを示すため、利益水準に対する株価の「割高」、「割安」を判断する尺度として利用されます。

 

株価はEPSとPERを掛け合わせることで求められるため、例えば、好決算などで今期の1株あたり予想利益が大きく増加した場合、株価はEPS主導で上昇しやすくなります。一方、投資家の間に株価の先高観が広がった場合、株価はPER主導で上昇しやすくなります。つまり、EPS主導の株高は「好業績」を反映した株高、PER主導の株高は「期待」を反映した株高といえます。

日経平均は足元堅調に推移しているが、EPSとPERをみると、PER主導によるところが大きい状況

先週の日経平均株価の動きを振り返ると、週明け8月4日は前週末に発表された予想比弱めの7月米雇用統計などを嫌気し、一時40,000円を割り込みましたが、その後は切り返し、8月8日には取引時間中に42,000円を回復する場面もみられ、堅調な地合いが確認されました。そこで、日経平均のこの動きは、EPSとPER、どちらの主導によるものかを検証してみます。

 

直近のEPSとPERの推移をみると、EPSが水準を切り下げる一方(図表1)、PERは水準を切り上げており(図表2)、先週の株高はPER主導によるものであることが分かります。なお、EPSの低下については、このところの企業の決算発表を受けての動きと考えられ、東証株価指数(TOPIX)構成企業の2月および3月期決算企業の今年度会社予想をみると、全体で減益の見方が示されています。

 

(出所)日本経済新聞社のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]日経平均株価のEPS (出所)日本経済新聞社のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(出所)日本経済新聞社のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日経平均株価のPER (出所)日本経済新聞社のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

日経平均が過熱感から短期的に調整しても2012年以降の上昇トレンドは継続の可能性が高い

日足のオシレーター系チャートで短期的な相場の過熱感を確認すると、「RSI(相対力指数)」は8月8日時点で66.6%水準にあり、買われ過ぎとされる70%水準をまだ超えていません。ただ、RSIよりも動きが速いとされる「ウィリアムズ%R」は、同日時点で-9.9%水準にあり、買われ過ぎとされる-20%を超えています。したがって、ごく短期的な日経平均の調整については少し警戒が必要と思われます。

 

ただ、直近の企業決算については、おおむね想定内との声も多く、また、米関税政策に対する過度な懸念が後退するなか、国内の政局も今のところ不透明感が強まる状況にはないことから、相場が幾分過熱したまま、上値を試すことも考えられます。この先、日経平均が短期的に調整したとしても、5月16日付レポートで示した2012年以降の上昇トレンドは続く可能性は高いとみています。

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価のEPSとPER~足元の動きを検証する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

 

市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト

 

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