自宅に住み続けながら、年金にプラスして生活資金が手に入る――。「リバースモーゲージ」は、持ち家はあるものの現金収入が少ない多くの高齢者にとって、非常に魅力的な制度に映るだろう。しかしその裏には、人生の最終盤で自宅を失いかねない深刻な落とし穴が。実情をみていく。
リバースモーゲージなんてやらなきゃよかった…月7万円の年金で暮らす69歳女性、“夢の制度”利用で破滅。人生の最後に「法廷闘争」、自宅を失うか否かの瀬戸際 (※写真はイメージです/PIXTA)

悲劇を避けるために

リバースモーゲージは、計画的に利用すれば有効な選択肢になり得る。しかし、それはすべてのメリット・デメリットを理解し、将来のリスクを許容できる場合に限られている。康子さんのような悲劇を繰り返さないためには、第一に金融機関、不動産業者の説明を鵜呑みにしないことが重要だ。「いいこと」しかいわない担当者も少なくない。必ず契約書の隅々まで読み込み、少しでも疑問があれば何度でも質問する。

 

また、契約前に、弁護士やファイナンシャルプランナー、地域の消費生活センターなど、第三者の専門家に相談し、客観的な意見を求めることが望ましい。加えて、家族(推定相続人)と徹底的に話し合うべきだろう。将来のトラブルを避けるため、必ず事前に理解と同意を得ておく。

 

ほかの選択肢も検討することを強く勧める。家を売却して小さな賃貸に住み替えたり、自宅を保持したまま一部を貸し出したり、などほかの資金捻出方法と比較検討するべきだろう。

 

人生100年時代、老後の生活設計はますます複雑化している。リバースモーゲージは、そんな時代の不安が生んだ金融商品だが、安易に飛びつけば、康子さんのように最後の安住の地さえ失いかねない。「住み慣れた我が家」という最も大切な資産をどう活用するのか。その決断は、自分自身の冷静な知識と判断、そして家族との対話のうえで下すべきである。