自宅に住み続けながら、年金にプラスして生活資金が手に入る――。「リバースモーゲージ」は、持ち家はあるものの現金収入が少ない多くの高齢者にとって、非常に魅力的な制度に映るだろう。しかしその裏には、人生の最終盤で自宅を失いかねない深刻な落とし穴が。実情をみていく。
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家だけは守りたかった寡婦
「この家に住み続けられるなら、なんでもします」
そういって契約書にサインしたのは、神田康子さん(仮名/69歳)。夫を亡くし、東京郊外の小さな一戸建てに一人取り残されてから2年が経っていた。
頼みの綱は月7万円の国民年金のみ。働きに出ようにも、長年の主婦業でこれといったスキルもなく、体力も衰えている。一人娘はシングルマザーとして必死に働いており、「迷惑はかけられない」という一心で、康子さんは日々の食費を切り詰め、光熱費に怯えながら暮らしていた。
そんなとき、メインバンクの担当者から提案されたのが「リバースモーゲージ」だった。「奥様、このご自宅を担保にすれば、ここに住み続けながら生活資金をお貸しできます。亡くなられたあとにご自宅を売却して返済いただくので、月々のご返済は利息分だけ。まさに一石二鳥の制度ですよ」。その言葉は、暗闇に差し込んだ一筋の光のように思えた。