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「リバースモーゲージ」という救いの手
高齢の単身女性の経済状況は特に厳しい。公的データによれば、単身高齢女性の貧困率は男性よりも高く、その生活の厳しさが浮き彫りになっている。康子さんの月7万円という年金額は、厚生労働省が発表する国民年金の平均受給月額(令和4年度で約5万6,000円)よりは多いものの、都市部で文化的な生活を送るにはあまりに心許ない。
さらに、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のいる世帯のうち8割以上が持ち家に住んでいる。これは、「資産はあるが、お金がない」という高齢者層が数多く存在することを示唆している。
娘に頼れない康子さんにとって、リバースモーゲージはまさに救世主だった。契約後、毎月10万円が口座に振り込まれるようになり、生活は一変する。以前のように食費を浮かすために夜ご飯を抜いて、早い時間に就寝する必要はない。暑くてもエアコンを付けられず、スーパーに涼みに行く必要もない。友人とお茶を飲める。なにより、「お金がない」という絶え間ない不安から解放されたことが、精神的に大きな救いとなった。
「これで娘に心配をかけず、夫が遺してくれたこの家で穏やかに最期を迎えられる」康子さんは心からそう信じていた。このとき、契約書に書かれた「融資極度額」や「金利変動リスク」といった小さな文字の意味を、深く理解しようとはしなかった。