自宅に住み続けながら、年金にプラスして生活資金が手に入る――。「リバースモーゲージ」は、持ち家はあるものの現金収入が少ない多くの高齢者にとって、非常に魅力的な制度に映るだろう。しかしその裏には、人生の最終盤で自宅を失いかねない深刻な落とし穴が。実情をみていく。
リバースモーゲージなんてやらなきゃよかった…月7万円の年金で暮らす69歳女性、“夢の制度”利用で破滅。人生の最後に「法廷闘争」、自宅を失うか否かの瀬戸際 (※写真はイメージです/PIXTA)

デメリット

康子さんのように、想定より長生きすることで融資枠を使い切ってしまうケースは想定し得る。使い切ったあとは融資を受けられず、生活が一気に困窮する。

 

また、金利上昇リスクも孕んでいる。多くは変動金利のため、市場金利が上昇すると毎月の利払い額が増え、融資枠を圧迫するのだ。不動産価格下落リスクもあるだろう。契約後に不動産市況が悪化し、担保評価額が下がると、融資限度額が見直され、減額されることも。最悪の場合、追加の担保や元本の一部返済を求められてしまう。

 

メリットにて相続対策の話を挙げたが、トラブルの火種となることもある。子どもがいる場合、将来的に家を失うことになるため、通常は契約時に「推定相続人全員の同意」が必要となっている。

 

なかでも最大の問題点は、不動産価格が低く見積もられるリスクである。銀行は、将来の不動産価格下落リスクや、売却にかかる経費、すぐに現金化するためのディスカウントをあらかじめ織り込むため、担保評価額を市場価格より大幅に低く設定する。一般的に、市場価格の50%〜70%程度とされることが多い。たとえば、本人が「3,000万円の価値がある」と思っていても、銀行の評価は2,000万円、融資極度額はそのさらに8割の1,600万円、といった具合だ。この「評価額のギャップ」を理解していないと、「思ったより借りられない」「こんなはずではなかった」という事態に陥る。