日米の金利差は、為替相場や投資に大きく影響します。今のところ逆転は起きにくいと見られますが、米国が再びゼロ金利になるケースや、日本で財政リスクが急拡大する場合など、可能性はゼロではありません。本記事では、石川久美子氏『円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む』 (マイナビ新書) から、その理由と背景をご紹介します。

潜在成長率から考える長期金利は今後も米国優位か

もっと長いスパンで考えたときに、金利について何かヒントはないでしょうか。名目の長期金利は実質金利と期待インフレ率の合計で、これは①潜在成長率、②期待インフレ率、③リスクプレミアムの総和で成り立っています。

 

②については、近年は日本も上昇傾向にありますが、ここ20年にわたり、米国の方が高い状態が続いています。また、③リスクプレミアムは短期的な景気変動リスクであり、長期で見るとゼロになると考えるため、一旦この思考実験からは外すと、重要なのは①の潜在成長率になります。

 

潜在成長率は労働力の伸びと資本の伸びと生産性の伸びの総和です。労働力の伸びとは文字通り労働力人口や就労時間の伸び、資本の伸びは生産設備ストックの伸びを表し、生産性の伸びとは技術革新に伴う生産効率の上昇を示しています。

 

日米の労働力を考えるに、カギとなるのは人口です。日本は人口が減少していますが、米国では移民の流入もあって人口は依然として増加しています。米国が今後、移民の流入をどれだけ絞るのかにもよりますが、少なくとも日本よりも「労働力の伸び」は力強い状態が長期にわたって続くと予想されます。

 

設備投資については景気によって変動が大きい部分のため、長期にわたってどちらが強いとは言い難い部分がありますが、生産性の伸びに関しては、日本は米国に後れを取る状態が長期化しています。日本人の賃金を引き上げていくためにも生産性の向上は急がれる部分ではありますが、米国を抜くほどの伸びを見せるのは簡単ではないと考えられます。

 

これらの要素から、潜在成長率で日本が米国を抜くのは長期的に見ても簡単ではなく、長期金利においては米国の方が高い状態が続くと考えられます。これは長い目で見た場合の、ドル高・円安圧力になり得ます。

 

 

石川 久美子
ソニーフィナンシャルグループ株式会社 金融市場調査部
シニアアナリスト

 

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本連載は、石川久美子氏『円安はいつまで続くのか 為替で世界を読む』 (マイナビ新書) から一部を抜粋、再編集したものです。

円安はいつまで続くのか

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石川 久美子

マイナビ出版

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