▼大商店街、理髪外科医院
理髪師「や~ん、お客様ってばもうサイコー! 超カワイイッ☆」
客 ヤダーウレシー
理髪師「ワタシがもっともぉ~とカワイくしてあ・げ・る!」
黒エルフ「……あいつ、男よね」
女騎士「……うむ、男だな」
下女「ご主人様ぁ……新しいお客様です……!」
理髪師「キャー! 2人とも綺麗なお顔ね、腕が鳴るわぁ〜! もっと近くで見せてちょうだいッ」ズイッ
女騎士(うっ、このニオイは!?)
黒エルフ(香水きっつぅ!!)
理髪師「こんな美人さんを捕まえるなんて、あなたもなかなかヤルわねぇ」
下女「ヒヒッ……あ、ありがとうございます!」
理髪師「今のお客さんが済んだら、すぐにお2人の髪に取りかかるわね。こっちに座って待っててねぇ☆」
黒エルフ「いいえ、まだこの店で切ると決めたわけじゃ……」
理髪師「遠慮しないで! 可愛いは正義でしょ? あなたを正義の味方にしてあ・げ・る!」
女騎士「よろしく頼むのだ!」ガシッ
黒エルフ「」
下女「ご、ご主人様……何かお手伝いすることは……?」
理髪師「だいじょーぶ。こっちは任せて♪ たしか先週ぶんの帳簿が、まだ途中までしか記入できていなかったはずよね? そっちを頼むわぁ」
下女「ヒヒヒ……かしこまりました……」
女騎士「ほう。この理髪外科医院はちゃんと帳簿をつけているのだな」
理髪師「ワタシのお師匠さまに教わったのよ、帳簿を大切にするようにって。彼は魔国移住者の三世だったのよぉ~」
黒エルフ「魔国では複式簿記が普及しているらしいわね」
女騎士「で、そのお師匠さまは?」
理髪師「故郷の魔国に帰ったわ。勇者さまが派遣されたころから、戦局がキナくさくなったから……。さてと、ムダなお喋りはお・し・ま・い! 仕事にかかるわよぉ」
ジャキッ
黒エルフ「何よ、その巨大なハサミ……?」
女騎士「まさか……終焉をもたらす神器『アトロポスのはさみ』では!? なぜこんな場所に!」
理髪師「じっとしててねぇ。動くと首が落ちるわよ」
女騎士・黒エルフ「「」」