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現代の親に求められる意識の進化
私たちは自分をプレモダンな人間だともトラディショナルな人間だとも思っていないかもしれないが、もし第3次元の意識で現実を意味構成するなら、意識の観点から見て、私たちは現代世界に生きるトラディショナルな人間ということになる。モダニティ(現代性)を求めることはすなわち、第4次元の意識を持てという要請である。それは、効果的なペアレンティングやパートナリングに関するどの要求や期待のなかでも言われているし、アリス・ミラーも「みずからの内に支えを見出すことが必要になる」と記している。AT車を探すのではなく、みずからギアチェンジする必要がある。そうミラーは述べているのである。
このような助言の、第3次元の意識にとっての意味は、第4次元の意識にとっての意味とはずいぶん違うと思われる。「水から出た魚」と聞いて目に浮かぶのは、生きていくのに必要な環境から締め出された、死に物狂いの、息も絶え絶えな生き物の姿だ。だが、「水から出た魚」は、実は人類の進化を物語ってもいる。海中生物から進化した陸上生物にとって、ミラーの助言は全くそのとおりだろう。しかし、水から出た大半の魚が今探しているのは、陸上生物へ進化する道ではない。飛び込むための新たな池である。どうやら、現代世界における第3次元の意識への支援は、まさにこの2種類――「飛び込むための新たな池を提供する」と「水中生活からの進化を促す」――になりそうである。
支援というテーマについては意識に対する支援としてのちほど詳述するが、その伏線をまずは示しておきたいと思った。なぜなら、親に対する期待――リーダーとして家族を導く、役割をつくる、制限を設ける、境界を維持する――を考察するなかで、「ペアレンティングに関する要求に応えるのに、第3次元の意識があれば十分か」という問いに対する答えがノーであることが明らかになってきたからであり、結果として、第3次元の意識で世界を意味整理する親は効果的なペアレンティングを行えないと言えそうだからである。
とはいえ、そこからそう簡単に次の考えが出てくるものではない。おそらくは、第3次元の意識を持つ親が子どもを育てる際には、第4次元の意識を持つようになるための支援が必要ということだろう。必然的に目を向けることになる問題は、「そのような支援を必要としている親がどれくらいいるか」と「どのような支援を得ることができるか」だ。ただ、これらの問題がどれくらい重要であるかは、ペアレンティングに関して行き着いた結論が、現代における大人の生活の他の領域で要求されるものにも当てはまるかどうかで決まる。
ロバート・キーガン
ハーバード大学教育学大学院
名誉教授