(※写真はイメージです/PIXTA)
再雇用後に求められる「新たな役割」にモチベーションがあがらない
40年近くの会社員人生で培ったスキルが再雇用後にはほとんど生かせない状況となり、次第に「やりがい」を感じることも少なくなりました。さらに「自分はこの会社に不必要な人間なのではないか」と感じることが多くなります。「このままでいいのか」という思いが日に日に大きくなっていきました。
さらには再雇用後、次第に孤独感が強まっていきました。それまで仕事を通じて人とのつながりを感じていましたが、会議などに呼ばれることはなく、淡々と業務をこなすだけ。やろうと思えば、会社内のコミュニケーションはすべてメールで完結できます。上司や部下とのコミュニケーションの機会は極端に少なく、自分から話をしなければ、ひと言も発しないまま定時を迎えてしまいます。
だからといって、積極的なコミュニケーションも憚られました。定年前、同じ部署内の再雇用社員、つまり今の今井さんと同じ立場の人から先輩風を吹かせて話をされることがあり、「老害だな」と感じていたからです。「あなたが現役の頃と状況はずいぶんと違うんだよ」「サポートならサポートに徹してほしい」などと思っていた手前、とても自分から話しかけることはできません。「存在自体、老害などと思われているのではないか……」とさえ感じることがあり、一層、社内で孤立を深めていったのです。
給与減と役不足感。大企業の部長まで上りつめた今井さんにとっては、高すぎる壁でした。
心境の変化
定年から2年。今でも再雇用社員として働いています。ただ心境の変化はあったようです。
「若手社員から仕事の進め方やキャリアに関する相談を受ける機会があり、自身の経験を踏まえたうえで話をしました。彼らは喜んでくれて……。かつて自分が若手だったころ、上司に相談してもなかなか親身になってもらえなかった経験がありました。あのとき、もっと気軽に相談できるベテラン社員がいればと考えていましたが、今の私ならそのような存在になれると考えたんです」
単に心の持ちようが変わっただけですが、以来、再雇用である自分の存在意義を感じられるようになりました。心の持ちようは外からもわかるのでしょうか。現役社員から相談などで話しかけられることも増え、仕事終わりに一回りも二回りも年下の社員から誘いを受けることも。さらに単調に思えた仕事も現役社員が活躍するための基盤となり、自分の仕事が間接的にではあるものの、会社の役に立っていることを実感できるようになったのです。
「毎日顔を合わせ、挨拶を交わす同僚たちがいる。それだけで定年で仕事を辞めなくてよかったと感じています」
定年後の働き方について考える
定年後、雇用形態や役職の変更が伴うことが多く、大幅な給与減となることは珍しくありません。またシニア社員にはそれまでのキャリアを生かすことが求められる一方で、その活かし方を十分に確立できていない企業も少なくありません。このような状況下、再雇用される側も、定年後の実際の働き方を事前に把握しつつ、やりがいをどこに求めるか、しっかりと検討しておくことが重要です。
[参考資料]
厚生労働省『令和6年 高年齢者雇用状況等報告」』