
固定費だけで7万円…75歳おひとり様「ギリギリの生活」
年金だけで老後を暮らす──それがどれほど厳しいことなのか、実際に体験するまでは実感が湧かないかもしれません。佐藤正夫さん(仮名・75歳)は、月12万円、手取りで月10.5万円という年金で生活しています。退職後10年以上が経ち、貯蓄は底をつき、厳しい生活を強いられています。
佐藤さんは埼玉県内の築50年のアパートに暮らしています。家賃は月5万円弱。そこに光熱費や通信費などを加えると、毎月の固定費は7万円近くになります。残り3.5万円程度で、食費・医療費・日用品などをすべて賄わなければなりません。
食費は1日500円以内に抑え、野菜や魚は見切り品を狙って購入しています。服は10年以上着ているものばかり。風呂は2日に1回で、お湯は洗濯に再利用しています。エアコンは極力使わず、夏と冬は「命がけ」の生活だと語ります。高齢になると避けられないのが医療費です。高血圧気味の佐藤さん、医療費は月1万円程度になることもあります。
もともとギリギリの生活だったところに、昨今の物価高が直撃。特に昨今の米の高騰は大きな打撃だといいます。総務省『小売物価統計調査』によると、2025年3月の米の価格(5キロ袋入り/コシヒカリを除く)は4557円。1年前(2306円)から約2倍に高騰しています。
「備蓄米の放出とかいっていたけど、全然値段は下がらないじゃないか。どうなっているんだ。米さえ食べておけば何とかなると思っていたけど、こんなに高いんじゃ、何を買って生きていけばいいのか」
生活はどんどん苦しくなるばかり。食事を1日に1回にするなど、さらなる節約を強いられています。また先日、家賃を1週間滞納してしまったことがありました。大家からの督促状が届き、「このままでは住む場所を失うかもしれない」と不安に駆られたといいます。