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年金月13万円だけで生活する日々
谷口和子さん(仮名・78歳)は5年前に夫を亡くし、現在は東京都内の団地でひとり暮らしをしています。年金は遺族年金と自身の年金を合わせて月13万円。企業年金などはなく、公的年金のみで生活しているといいます。
【公的年金を受給する高齢者世帯、総所得に占める「年金」の割合】
総所得の100%…41.7%
総所得の80~100%…17.9%
総所得の60~80%…13.9%
総所得の40~60%…13.2%
総所得の20~40%…9.3%
総所得の20%未満…4.0%
出所:厚生労働省『令和5年 国民生活基礎調査』
「毎月の家賃が5万円弱、電気代やガス代、食費も入れると、ほとんど残りません」
物価上昇が続くなかで、生活は年々厳しさを増しているといいます。冷暖房は極力控え、特売品を求めて何軒もスーパーを回る日もあるそうです。しかし和子さんは、それを「工夫」と呼び、「楽しいと思えるうちは、まだ大丈夫」と微笑みます。
さらに和子さんは週に5日、何らかの病院に通っているといいます。診察を受けることもありますが、大抵は待合室で話をして帰ることがほとんどです。
「病院に行くと、誰かと話せるんです。受付の人や看護師さん。待合室では、顔なじみの方とちょっとした世間話をすることもあります」
ひとり暮らしの高齢者にとって、「誰かと話す」ことは心の健康を保つためにも欠かせない要素です。特に、家族や友人との接触が減っていく中で、日常生活のなかに会話の機会をつくるのは容易ではありません。病院は、本来の役割とは別に、こうした「社会との接点」としても機能しているのです。
和子さんが病院に通うもう一つの理由、それは「孤独死への不安」です。
「もし家で倒れたら、気づかれないまま…というのが一番怖いですね。でも、病院にちゃんと通っていれば、来なかったときに誰かが気づいてくれるかもしれないって、そう思っているんです」
定期的に顔を見せることで、誰かが自分の存在を把握してくれている。それは、ひとりで暮らす高齢者にとって、大きな安心材料となります。警察庁によると、2024年上半期(1~6月)、自宅で死亡したひとり暮らしの高齢者は全国で2万8,330人で、そのうち死亡から警察が認知するまでに2週間以上かかったケースが17.3%(4913人)に上っています。