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「私は捨てられたの?」…高級老人ホームで義母が流した涙の正体
都内のIT企業でパート勤めをする佐藤美由紀(55歳・仮名)。同居していた義母の佐藤和子(82歳・仮名)さんが、自ら「迷惑をかけたくない」と、月額30万円の高級有料老人ホームへの入居を希望した際、美由紀さんは心のどこかでホッとしたと振り返ります。
「お義母さんは元看護師で、年金も月に20万円ほどありました。入居一時金も自分の貯金で払うから、と。夫も『本人がそう言うなら』と賛成し、私も“自立した高齢者の賢い選択”だと考えました。80歳を超えて、足元がおぼつかないときがあって、いつまでもこの家で暮らすのはしんどいと思っていたので」
入居当日、和子さんは「これからは上げ膳据え膳で楽をさせてもらうわね」と笑顔で車に乗り込みました。
しかし、その笑顔はわずか1ヵ月ほどで消え失せることになります。週末、美由紀さんが面会に訪れると、そこには驚くほど痩せこけ、虚ろな目で窓の外を眺める和子さんの姿がありました。
「驚いて声をかけたら、お義母さん、弱々しく笑っているだけで。それで施設での暮らしはどうなのか聞いたんですが、『することがなくて……』と」
美由紀さんは共働き夫婦。平日の家事の多くを和子さんが担ってくれていました。朝、家族のために出汁からみそ汁をつくり、家族全員分の洗濯をし、広い家を水拭き・乾拭きし、夕食の準備もして、家族の帰りを待つ。ときに「忙しいわ」と愚痴をこぼしながらも笑う――それが施設に入ってからは、決められた時間に食堂にいけば食事が用意され、知らない間に部屋の掃除も終わっている。
決まった時間にお風呂に入り、就寝時間が来たらテレビを消して寝る。そんな繰り返しに、「私、何のために生きているんだろう」と、何もする気が起きなくなってしまったというのです。
「人見知りがちなお義母さんの性格も施設での生活には合っていないようで、ほぼ人と話さないようです。施設では大切な『お客様』。何不自由なく暮らせますが、それがかえってお義母さんには合っていないことは明らかでした」
気づいたら、「もう家に帰りましょう、お義母さん」と言っていたという美由紀さん。夫からは「身勝手だ」と怒られたものの、決断に迷いはなかったといいます。その後すぐに退去の手続きを取り、再び同居をスタート。少しずつではありますが、和子さんは毎日のルーティンを取り戻そうとしています。