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「まだ終わっていない」…自立を阻む、家族の監視網
東京都世田谷区。元商社マンの加藤昭夫さん(82歳・仮名)。 月20万円強の年金に加えて、現役時代の蓄財と運用で築いた7,000万円の金融資産。 これまで大病とは無縁で、毎朝の散歩と読書を欠かさない毎日は、傍から見れば理想的な老後そのものでした。 ところが、加藤さんはどこか浮かない表情を浮かべています。
「もう、電話の音を聞くだけで嫌になります。特に孫の健太(22歳・仮名)からの電話は。とにかく今は声を聞きたくない」
異変が起きたのは、2年前、妻を亡くしてからでした。 当初は加藤さんを気遣って頻繁に訪れていた長男夫婦と孫でしたが、その態度は次第に「労わり」から「監視」へと変わっていったといいます。
「遊びに来るたびに、家中を検分されるんです。冷蔵庫の中を見ては『この賞味期限、昨日で切れてるよ。大丈夫なの?』と心配され、ゴミ出しのルールを間違えれば『近所に迷惑をかける前に施設を考えなきゃ』と急かされ……。 独り暮らしの私を心配しているのでしょう。しかし私はまだ、自分のことは自分でできます。それなのに家族は、私のことを『何もできない老人』としか見ていない」
決定打となったのは、大学を卒業したばかりの孫・健太さんのひと言でした。 加藤さんが趣味の海外旅行を計画していると話した際、健太さんは真剣な顔でこう告げたのです。
「じいじ、もうやめなよ。飛行機で倒れたらどうするの? そんなお金があるなら、元気なうちに老人ホームへの住み替えとか考えようよ。そのほうが安心だし、俺が手続きを全部やってあげるからさ」
加藤さんはその時の心境を、絞り出すように語りました。
「孫にとっては親切心でしかなかった。それはよく分かっています。 けれど私の意志とは関係なく、『心配だから施設に入ってもらって安心したい』という本音が聞こえた気がして。 私の人生なのに、家族が終わらせようとしている……。どこか屈辱的な感じがしました」
それ以来、加藤さんは孫からの着信を拒否し、家族との接触を極力断つようになりました。
「いつものようにアポなしでやってきたとき、『頼むから、もう帰ってくれ』と叫んで絶対に家に入れなかった。 とにかく今は、家族との接触がストレスなんです。 結局、まだ若い彼らには、私の気持ちなど理解できないんですよ」