年金を繰下げて増額、受給までの期間は働いて補填する計画が…
年金を5年繰下げると5年で年金が42%増える。これはかなり魅力的な数字です。元会社員の松山和夫さん(仮名・66歳)もそう感じた1人でした。
松山さんの年金額は月11万円程度。また、働いていた会社には退職金制度がなかったため、コツコツと給料やボーナスから貯めた約1,200万円が貯蓄のすべてでした。
家賃も含めて毎月16万円程度で暮らすとしても、月々5万円、年60万円の赤字です。1,200万円あれば20年間持つ計算ですが、月16万円で収まらない月も出てくるだろうし、単身の松山さんにとって安心な金額ではなかったといいます。
そんな時に知った繰下げの仕組み。70歳まで繰下げれば、月15万6,200円ほどになります。松山さんは、早々と引きこもっても仕方ないからと元々70歳ぐらいまでは働くつもりでした。
年金をもらわない5年間をアルバイトの収入で乗り越えれば、残りの人生はぐっと楽になる……そう思い、65歳になっても年金受給開始の申請はしませんでした。
ところが、66歳になってすぐの松山さんの身体に異変が。胃癌が見つかったのです。手術を受け退院したものの、体調や精神面の不安などが影響して事故があっては大変だと、収入を得るために請け負っていた介護施設の送迎のアルバイトは、いったん休むことに。
「自分が長生きするとは限らない」という事態に直面したこともあり、5年の繰下げは早々と撤回。老齢年金裁定請求書を提出し、繰り下げた分だけ増額した年金を受け取り始めました。
「日本人は癌になる確率が高いとはわかっていたんですが、自分事では考えていなくて……。過信しすぎていました。長生きしたらということばかり考えていましたが、今は逆になっちゃいました」そう話す松山さん。年金については、わずかな増額ではあるものの、受給のありがたみを感じているとか。
繰下げの計画は慎重に
このように「ここまで繰下げれば〇〇円に年金が増えるから……」そんな風に計画を立てても、想定外のことが起こることもあります。
繰下げをやめたければ申請書を提出することで受給できるので、取り返しのつかないことにはなりませんが、「繰り下げて、受給のない期間は働いて埋める」といった老後の資金計画は頓挫する可能性があることは認識しておく必要があります。
また、繰下げには「年金が増額すると税金や社会保険料の負担が増えるので、手取りでは42%などの増加は得られない」「受給開始が遅くなる分、ある程度長生きしなければ得をしない(損益分岐点)」といったデメリットがあります。
結婚している場合、「年下の妻がいる場合に通常は対象になる加給年金が受け取れない」「夫の死後に妻が受け取る遺族厚生年金の額は、65歳時点の年金額を基に計算するため繰下げで増えた分が反映されない」といった注意点も。繰下げについては、メリット・デメリットをしっかり把握したうえで検討するとよいでしょう。
注目のセミナー情報
【国内不動産】4月26日(土)開催
【反響多数!第2回】確定申告後こそ見直し時!
リアルなシミュレーションが明かす、わずか5年で1,200万円のキャッシュを残す
「短期」減価償却不動産の節税戦略
【資産運用】5月10日(土)開催
金価格が上昇を続ける今がチャンス!
「地金型コイン」で始める至極のゴールド投資
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】