●氷見野副総裁と植田総裁は今週、春闘のモメンタムと米経済政策の不確実性について言及した。
●両名とも賃金に明るい見通しを示し、来週の会合では利上げを議論する明確なメッセージを発信。
●弊社は来週の利上げ予想を維持、ただ20日の米大統領就任式と直後の市場の反応は要注意。
氷見野副総裁と植田総裁は今週、春闘のモメンタムと米経済政策の不確実性について言及した
日銀は1月23日、24日に金融政策決定会合を開催します。これに先立ち、今週は1月14日に氷見野良三副総裁が神奈川県金融経済懇談会で講演を行い、15日と16日には植田和男総裁が、それぞれ全国地方銀行協会の会合と第二地方銀行協会の会合で挨拶しました。今回、氷見野副総裁と植田総裁から、金融政策決定会合における議論の手掛かりが示されたため、以下、要点をまとめます。
はじめに、昨年12月の植田総裁の発言を振り返ると、①2025年の春季労使交渉のモメンタム(勢い)について、もう少し情報が必要であったこと、②次期トランプ政権の経済政策を巡る不確実性が大きく、その影響の見極めが必要であったこと、この2点を前回12月の金融政策決定会合で利上げを見送った理由として挙げました。氷見野副総裁と植田総裁は今週、これらについて言及し、市場の注目が集まりました。
両名とも賃金に明るい見通しを示し、来週の会合では利上げを議論する明確なメッセージを発信
まず、氷見野副総裁は賃上げについて、「支店長会議でも、全体的に強めの報告が多く」、「年初の各界の方々の発言も前向きなお話が多かった」との印象を語り、米経済政策は、「来週の(米大統領)就任演説で政策の大きな方向は示されるのではないか」と述べました。また、「1月に利上げをするかどうかというところが、(1月会合の)議論の焦点になるだろう」と明言しました。
次に、植田総裁は賃上げに関し、「年初に各界の方々の発言や支店長会議で聞いた全国の状況は前向きな話が多かった」との認識を示しました。また、「米国の(トランプ)新政権の経済政策を巡る状況、春季労使交渉に向けたモメンタムは重要」とし、来週の金融政策決定会合で、「利上げを行うかどうか議論して判断する」と述べました。つまり今回は、来週利上げを議論するという明確なメッセージが、総裁・副総裁から発信されたことになります。
弊社は来週の利上げ予想を維持、ただ20日の米大統領就任式と直後の市場の反応は要注意
こうしたなか、時事通信社は1月15日、米ブルームバーグ社は16日、トランプ次期米大統領の20日の就任式における言動で金融市場が大きく混乱しない限り、日銀は23日、24日の金融政策決定会合で利上げを決定する公算が大きい旨を報じました。氷見野副総裁、植田総裁の発言や、複数メディアの報道を受け、市場では1月利上げの織り込みが急速に進んでいます(図表1、2)。


弊社は、今回の氷見野副総裁と植田総裁の発言について、日銀の利上げ判断が前進している可能性を示唆するものと判断しており、1月の利上げ予想を維持しています。ただ、前述の報道の通り、米大統領就任式後の市場の反応次第では、利上げが見送られることも想定されるため、1月20日の就任式におけるトランプ氏の言動と、その後の金融市場の反応をしっかりと見極める必要があると考えます。
(2025年1月17日)
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「2025年1月日銀政策会合」プレビュー ~今回の注目点を整理する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト