定年退職の夫を労う、妻と娘。穏やかな祝いの場が…
これまでは家庭を疎かにしてきた。定年まで頑張れたのは家族のおかげ。そのような思いから、大野さんは定年で退職すると決めていたといいます。
最後の出社日。直属の部下のほか、これまで関わってきた後輩も駆けつけて、盛大に送り出してくれたといいます。
――ありがとう、君たちと働けて本当によかった
大野さんの最後のスピーチには、涙を流す人たちも。そして最後は一本締めで、大野さんの会社人生は終わりを迎えました。我ながら有終の美……そう思いに浸りながら、急ぎ気味で自宅へ。家で待っていてくれたのは、妻のほか、すでに家を出たふたりの娘たち。定年まで勤めあげた父親を労おうと、平日にも関わらず、わざわざ集まってくれたのでした。
家族にも恵まれて、本当に幸せ者だ……会社ではなんとか抑えていた涙が、家族を前にして崩壊したといいます。ただ感動のシーンはこれまで。家族で大野さんの定年を祝い、乾杯。家族でお寿司をいただいていたところ、話は定年後の生活に。そこで妻から思いもよらぬ発言が飛び出したのです。
――私、友だちとお店をやろうかと思っていて
家族全員が「えっ⁉」。一瞬、時が止まりました。元々、料理好きの妻。お世辞抜きで、その腕はプロ級です。そんな妻の手料理を毎日食べることができたのも、大野さんの幸せではありましたが、まさか起業とは……。店というのは、添加物を使用せず、天然素材にこだわったパン屋。小麦や卵や乳製品を使わない、アレルギー対応のものなどもラインラップして、誰もが美味しく食べられるパンを作っていきたいといいます。
――この年になって起業だなんて……
大野さんがいうと「挑戦に年なんて関係ないじゃない」と妻。
――これまでは全力であなたを支えてきたんだから、これからは、あなたが私を支えてよね
株式会社アントレによると、2023年の新設法人は約15万人。個人・法人の割合では、個人が85.2%を占め、年齢では50代が35.0%と最多。60代も15.9%を占め、60歳定年後の起業というのも珍しいことではありません。
サラリーマンの夫を妻が支える……日本ではよくみられる構造ですが、60歳定年を機にバトンタッチ。夫が妻を支えるというパターンも増えていくかもしれません。
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[参考資料]
株式会社アントレ『【2024上半期まとめ】23年の新設法人が15万人!シニア層に起業拡大 アントレ独自調査でもシニアが活況、50代の会員率が過去最多を更新』