父を失い憔悴する母…心配した長男が「老人ホーム」を提案
夫を事故で失い、突然ひとり暮らしとなった田口素子さん(仮名・74歳)さん。仲睦まじい夫婦だっただけに喪失感は大きく、抜け殻のような毎日を送っていたといいます。3人いる息子のうち、長男の自宅は車で30分ほどの距離。子どもたちの間で、長男宅で同居という話もあがりましたが、義娘とは相性が悪く、素子さんには同居の意思がありません。
長男は何かと心配して週末ごとに訪ねに来てくれます。ただあまりに憔悴している母の様子をみて、このままではいけないと思ったのでしょう。「老人ホームを考えてみては?」と提案しました。それに対して素子さんは「私を厄介払いするつもり?」と悪態をついてしまったとか。
母親の気持ちを察したのでしょう。長男は丁寧に説明してくれたといいます。今どきの老人ホームは、昔のような姥捨て山みたいなところではない。介護を必要としない、健康な人だけが入居できる施設もあるし、高級ホテルみたいなところもある――いろいろと今どきの老人ホーム事情を話してくれました。
さらにタブレットを使っていろいろな老人ホームの写真や動画を見せてくれました。「これが本当に老人ホーム?」。素子さんが抱いていた老人ホームのイメージががらりと変わったといいます。
――一緒に見学に行こうよ。写真や動画と実際は違うかもしれないし
このまま自宅にいても一人で老け込むだけだと思った素子さん、長男に老人ホーム選びを任せることにしました。条件として挙げたのは「費用は年金月15万円と貯蓄額を考慮して月25万円まで」「食事が美味しい」「入居者同士の交流が盛ん」の3つ。さらに欲をいえば「居室から海が見える」となおよい……翌週には長男が候補となるホームの見学会を予約してくれました。
見学に行くと、想像以上の素晴らしさ。費用、設備、眺望。試食もさせてもらいましたが、まるでレストランのような美味しさ。文句のつけようがありませんでした。「私、ここで暮らしたい」。素子さんは早々に契約を決めました。
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