(※写真はイメージです/PIXTA)

年金の受給時期を遅らせる代わりに受給額が増える「繰下げ受給」。受給額の増加は魅力的ですが、お得かどうかの判断が難しく、繰下げるべきか迷っている人もいるでしょう。そこで本稿では金﨑定男氏とAIC税理士法人による著書『会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集し、繰下げ受給の基本や注意すべきポイントについて解説します。

繰下げ受給の注意点

さかのぼり請求可能

年金の繰下げを請求する場合に、通常は年金請求しない状態にしておくことになり、何歳から繰下げして受給するなどという予約は行いません。66歳を過ぎた以降であれば、いつでも年金の繰下げ受給の請求をすることが可能となります。

 

ここで重要なポイントがあります。当初、年金繰下げ受給をするつもりで、年金の請求を行わずに放置しておき、68歳になった時点で、やはり繰下げは行わないでおくことも選択可能です。その場合には、年金の請求時に繰下げの申し出をせず、65歳到達時点の本来の年金をさかのぼって請求することができます。

 

したがって、繰下げ受給待機中の人が68歳になった時点でがんになったことがわかり余命1年などと宣告された場合には、その時点から繰下げ受給の申請をするよりも、65歳の時点にさかのぼって繰下げ増額されない年金を一括して受け取ったほうが有利となります。

 

なお、繰下げ受給をせず、さかのぼって受け取ることができる最大期間は5年間となりますので注意が必要です。

 

このさかのぼり受給にはもう一つ注意点があります。それは、もらった年金は所得になり、課税されるということです。

 

課税の方法は、過去の各年分の所得計算に反映され、過去にさかのぼって各年分の雑所得が増えることになります。過去に確定申告をしていなかった場合には、確定申告をしなければならない可能性が出てきます。

 

過去に確定申告をしている場合には、修正申告をしなければならない可能性が出てきます。そして過去の各年度別に追加税額が発生した場合には、ペナルティとしての延滞税が課税されることがあります。

 

インフレとデフレの影響

2020年代に入り、コロナ禍を契機として世界的な物価高、インフレ傾向となっており、日本でもインフレが進行しています。

 

上記の年金繰下げの損益分岐点の大前提として、デフレ、インフレ、金利の影響は考慮に入っていません。もし、日本も一部の外国のようにハイパーインフレの状態になり、消費者物価指数が年率8.4%を超える状況になった場合には、繰下げによるメリットはなくなり、少しでも早いタイミングで年金受給するほうが有利となります。

 

繰下げ待機中に死亡の場合

繰下げ請求は、本人が死亡したときは遺族が代わって行うことはできません。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われます。

 

ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなります。この点を考慮すると、制度設計としては10年間の繰下げができますが、繰下げ期間は、最大5年にとどめておいたほうがよいかもしれません。

 

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※本連載は金﨑定男氏とAIC税理士法人による著書『会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集したものです。

会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本

会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本

金﨑 定男・AIC税理士法人

日本能率協会マネジメントセンター

【内容紹介】 「株価は上がれど給料は増えない……なのに増税ばっかりで嫌になる」 「NISAとかiDeCoとかふるさと納税とか、やりたいけどよくわからない」 毎年収めるため本来は身近なはずなのに、知らないことが多い税金。…

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