前回は、広大地評価で大きな減額となる理由、すなわち土地評価の原理・原則について取り上げました。今回は、土地評価における「財産評価基本通達」の矛盾点について見ていきます。

広大地の適用が難しい土地の事例

今や広大地判定は相続税の申告時において必須の事項です。過去の東京アプレイザルニュースでは何十回も(少し大げさか)取り上げていますので、広大地の定義付けなどの細かい規定は述べません(国税庁による財産評価基本通達24-4を参照)。

 

今回は、私が考えても広大地の適用は無理がある(偉そうですみません)といわざるを得ない土地の事例を元に考えてみることにします。

 

 

A土地です。

所在地:東京都○○区

面積:約2,100㎡

用途地域:第一低専50/100 

 

広大地判定の3要素は

①マンション適地ではない(戸建て用地である)

②開発にあたり開発道路(潰れ地)が必要な土地である

③一定の面積以上であること(3大都市圏は500㎡以上)

 

これに該当すれば、広大地に認められるということです。

 

であれば、A土地はどうでしょうか。このような大きな土地は建売業者が買うのが通常です。その建売業者は土地を小さく区画割りして一般エンドユーザーに売ることになります。この時に道路を入れるべきなのか(B-1)、はたまた路地状敷地に区画割り(B-2)して道路を入れないのか判断が分かれることになります。

 

 

この案件は実際にあった例ですが、税務署の判断は図B-1は却下し、図B-2の区画割りが適正であるとして、更正請求は却下されました。確かに横に真ん中で切ると奥行は24mずつになるため、路地状敷地で間に合うため(つまり開発道路は不要となる)税務署の言い分も頷けます。

路地状敷地発生による減価分は5,900万円だが・・・

しかし、これからが今回の本題です。土地の評価額が問題です。図B-2によると路地状敷地(№10~15)が6ヵ所出来ることになります。しかし路線価評価は造成後の宅地の内、路地状敷地は何らの減価(明らかに不整形であるにも関わらず)をすることが出来ません。むしろ3方路に面するための増額(側方加算という)が生じることになるのです。

 

ただし、奥行価格補正が適用されるので正面路線価よりは単価は下がります。このように、内面的な地形には目をつぶり、外形面だけの評価になってしまうのです。通達によるルールだから仕方がないというのは如何なものかです。そこで、仮に区画割り後のそれぞれの敷地の評価がどうなるか、路地状敷地発生による減価分を査定してみました。

 

結果は全体地の評価額6億1,500万円に対し、路地状敷地等の個別的な要因を考慮すると、5億5,600万円になります。その差額は5,900万円です。当該地は広大地には認められないとしてもせめて路地状地の減価を含んだ、区画割りした後の地形による評価を認めてもらいたいと思うのは私だけでしょうか。

本連載は、株式会社アプレイザルの代表取締役・芳賀則人氏のブログ『芳賀則人の言いたい放題!』から抜粋、再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒https://t-ap.jp/blog/cat_blog/column/

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