2024年物流問題と騒がれ、その渦中にいるトラック運転手。元々、全産業を下回る「給与水準」、ゆえに平均を下回る「年金見込み額」……さらに今年に入り「給与減」と踏んだり蹴ったりの様子。また業界的に人手不足は深刻化するばかりで、その影響は私たちの生活にも忍び寄っています。
元サラリーマンなら平均年金「月17万円」だが…〈60歳・トラック運転手〉が自虐する、落胆の年金見込み額「40年間休まず走って、たったこれだけ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

トラック運転手…「低収入」「低年金」、さらに「給与減」の三重苦

今は会社が潰れては困る……そう伊藤さんがいうのは、65歳から受け取れるだろう年金がはっきりいって少ないから。

 

――「ねんきん定期便」!? あれに書いてあったのは月13万円ほど。40年間走ってきてそれだけだから、はっきりいってガッカリしたよ

 

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均は14万3,973円。65歳以上男性に限ると16万3,875円、女性に限ると10万4,878円。年金月13万円というと、男性の厚生年金受給者の下位20%を下回ります。

 

――もう少し働いてお金貯めないとさ、老後なんて迎えてらんないよ

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、全産業の平均年収は507万円。対し、大型トラック運転手の年収は485万円、中小型トラック運転手は438万円。全産業平均と比較して、大型トラックで4%、中小型トラックで14%低くなっています。

 

一方で法改正前の年間労働時間は全産業平均が2,136時間。対し、大型トラック運転手は2,544時間、中小型トラック運転手で2,508時間。全産業平均より350~400時間、月間30~33時間ほど長くなっています。長時間労働でありながら平均以下……これがトラック運転手の現実でした。さらに法改正により、労働時間&給与減。以前は、「走るだけ走れば儲かる」という世界だったので、あえて参入してくる人も多くいましたが、今はそれも封じられ、単に低収入の業界に甘んじているという状況。

 

――給与があがる気配もないし、夢もない。それでいて、わざわざキツイ仕事を選ぶ人なんていない

 

担い手不足により、業界では高齢化が進みます。ドライバーの平均年齢は50.6歳。全産業平均43.9歳を6歳以上も上回ります。年齢分布をみていくと、「50代」が30.3%、「40代」が25.4%、「60代」が19.4%。5人に1人は60代以上、一般企業であれば定年超えです。

 

低年収で低年金、さらに今年に入り給与減と、踏んだり蹴ったりのトラック運転手。その先には、「いつまでたっても荷物が届かない」という未来も現実味が増し、社会インフラの崩壊を指摘する専門家も。私たちもそろそろ「配送料アップ」を覚悟しなければならないタイミングに来ています。

 

[参考資料]

厚生労働省『賃金構造基本統計調査』

総務省『労働力調査』