3人の息子は介護施設と考えていたが…長男の嫁が反対
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』で親の主な介護者をみていくと「子」が45.7%、「配偶者」が39.8%、「子の配偶者」が10.9%でした。同居・別居でみていくと、同居の場合は「配偶者」が49.9%、「子」が32.3%。「子の配偶者」が11.8%、別居の場合は「子」が86.5%、「子の配偶者」が7.7%でした。
同居家族が介護をする場合、配偶者、つまり夫の介護を妻が、妻の介護が夫を担うケースが最多であるものの、その介護が終わったあと、残された妻または夫に介護が必要になった場合、子や子の配偶者が介護を担う……そんな画が見えてきます。
佐々木敬一さん(仮名・85歳)の場合、10年前に妻を亡くし、以来自宅(一軒家/持ち家)でひとり暮らしをしてきましたが、3年前にその自宅で転倒し大腿骨を骨折。3ヵ月の入院を余儀なくされました。入院を機に歩く力が衰え、介護が必要になるケースはよくあるもの。敬一さんも同じ。退院が迫っていましたが自力での歩行が困難となり、自宅での生活は難しい。また3人の息子たちは、みな現役で仕事をしているため、介護を担うのは難しい。退院後は介護施設に入ってもらうほうがいいのでは、と話し合っていたそうです。
そこで「もしみなさんがよいというなら、私がお義父さんの面倒をみます」と手を挙げたのが、長男の妻、聡子さん(仮名・55歳)でした。夫含め、息子たちは「そんな無理をすることはない」といったものの、敬一さんが以前から「最期まで自宅で暮らしたい」といっていたため、本心では願ったり叶ったり。また聡子さんも、自身の親の介護に対して心残りがあり、同じような思いを義父にはしてほしくない、という思いも強くありました。介護は大変であるものの、何もしないで介護施設を頼ることはしたくなかったといいます。
こうして、聡子さんが義父・敬一さんの介護を担うようになりました。敬一さんも義娘に頼りっきりでは申し訳ないという気持ちもあったのでしょう。聡子さんに頼りながらも、できることは自分でするというスタンスでいました。そのため、わずかではありますが筋力も回復。手すりや杖を使い、ひとつひとつの動作はゆっくりではあるものの、自活もできるようになっていったといいます。
自宅に戻っても、寝たきりの生活……そう思っていた敬一さん。充実した生活を取り戻せたいのも聡子さんのおかげ。そのような思いが強くあったのでしょう。
――聡子さん、本当にありがとう
ことあるごとに、口癖のようにいっていたといいます。退院後、自宅での生活は3年ほどではありましたが、敬一さん、願い通り、最期まで自宅で過ごすことができました。