30年後の母の相続…兄は平等な遺産分割を主張したが
その後、兄・達也さんは独身で実家暮らし、和樹さんは実家を出て結婚し、子どももいます。「いまはもっぱら、住宅ローンの返済のために働いているようなものです」と苦笑い。ただ家計の負担を感じるとき、ふと楽をしている兄の姿、そして父の相続の際の明らかな格差が思い出されるといいます。
そんなとき母が81歳で亡くなりました。亡くなる4年前、母は介護認定を受け、老人ホームに入居しました。看取り可の施設だったため、そこで最期を迎えました。
母が遺したのは、評価額3,000万円だという実家、と預貯金が4,000万円ほどでした。倹約家だった母は、父から相続した預貯金は手をつけないばかりか、コツコツとお金を貯めていった結果、貯金が倍になっていたんです。
相続にあたり、とくに遺言らしい遺言はありませんでした。まずは話し合いとなります。達也さんは「単純に半分ずつに分けよう」と主張。しかし和樹さんは、「実家は兄が、貯金は弟である私に」と主張。もちろん達也さんは「そんなのは不公平な分け方は納得ができない」と反論。そんな兄に、和樹さんは積年の想いをぶつけたといいます。
――55年間実家暮らしで甘ったれていたくせに、ふざけるな! なんぼでもお金あるだろう
――母さんの面倒を頼むという想いで父さんは兄さんに1,000万円を残したはず。実際は、早々に母さんを老人ホームに入れて楽をしてきた
――本当であれば父さんの相続のときに反論できたが、そこはグッと堪えた。今回はその分も多くもらう権利があるだろう
達也さんの主張通り2等分するなら、達也さんは「実家+貯金500万円」、和樹さんは「貯金3,500万円」といったところ。一方で和樹さんの主張は、兄が「実家のみ(3,000万円)」、和樹さんは「貯金4,000万円」。双方には500万円の差が生じます。
遺産7,000万円に対して、たかが500万円と思うかもしれませんが、和樹さんが50年以上にも渡り、あらゆる場面で感じてきた違和感は、こんなものではないといいます。話し合いは平行線のまま、今でも続いています。