遺産は3冊の預金通帳…それだけ!?
その後、香苗さんと三女は結婚し、実家を出ていきましたが、次女は独身でずっと実家暮らしでした。
――母のDNAは、次女が一番受け継いでいます。
そして父は15年前に亡くなり、今夏、母が85歳で亡くなりました。コロナ禍前に家で転倒し骨折、脚を引きずりながら歩くようになっていましたが、次女が一緒に暮らしていたので安心だったといいます。
体が不自由になっても「もったいない」が2人の口癖で、最低限の介護サービスしか受けようとしなかったといいまうす。それに香苗さんたちは呆れつつ、心配して声をかけました。「大丈夫?」「お金なら私たちが出すわ」「離れて暮らしているからお金の援助くらいしかできないけど」。しかし次女は「大丈夫、もったいないから」と、母の介護においても最大限の倹約していたといいます。
問題は、母が亡くなり、葬儀の後に3姉妹で遺産協議の話し合いの場。ダイニングテーブルの中心に置かれたのは、3冊の預金通帳でした。
――これがお母さんの貯金の結果。わたしたち1人に1冊のイメージで、コツコツ貯めてきたというやつ
香苗さんの幼少のころの記憶のとおり、母は3冊の通帳に分けて、コツコツとお金を貯めてきたよう。ただ香苗さん、強烈な違和感を覚えたそう。「通帳はこれだけ?」。
――ねえ、年金が振り込まれる口座は他にあったよね
――通帳ってほかにあるはずじゃない?
あの母が85歳まで生きて、幼少のころいっていた「1人3桁=1,000万円、つまり3,000万円」だけしか貯金ができなかったとは思えない。死ぬまでケチであることを貫いたのだから。
その後、年金が振込みとなる通帳が出てきたものの、そちらは入っては引き出しの繰り返しで残高はほぼゼロ。母は防犯上、できるだけ現金を持ち歩かない人でした。だからこそ、引き出したお金を財布などに入れているということはありません。つまり、絶対にほかに口座はあるはずです。
――絶対隠している
そう香苗さんはにらみ、次女が制するのを振り切って、三女と共に実家を大捜索。その結果、新たに3冊の預金通帳を発見。遺産は総額5,000万円になりました。
――まだ隠している……そんな気すらしています