人が亡くなったら必ず発生する相続。さまざまな手続きが必要となりますが、まずは相続財産がどれほどあるのか確認することが第一歩となります。この段階でトラブルが発生することも珍しくないようです。
「趣味は貯金」の85歳母が死去…遺産は3姉妹に1冊ずつの「預金通帳」に強烈な違和感。実家住まいの次女の制止を振り切り大捜索、暴かれた真実 (※写真はイメージです/PIXTA)

通帳の存在を内緒にする「遺産隠し」は珍しくない

口座や預金通帳の存在を教えなかったり、勝手に被相続人の口座からお金を引き出したりといった遺産隠しは、相続の場では決して珍しいことではありません。税務調査では見つかることが多いものの、遺産分割の場でそれを見つけるのは至難の業です。

 

そのため「遺産隠し」が起きないよう、生前に対策をうっておくことが重要になります。相続トラブル防止の正攻法といえば遺言書。ただし自分で書いて作成する「自筆遺言証書」はミスが起こりがちで、「法的には認められない」と、かえってトラブルになることが頻発。本当にトラブル防止を確実にしたいなら、遺言内容を公証人が筆記する「公正証書遺言」がおすすめです。

 

また今回の事例の場合、次女が母の介護を全面的に行っていたので、「寄与分」を主張する可能性があります。寄与分は、相続人の財産の維持、増加に特別の貢献をした相続人の持つ取り分のことで、受けることができるのは、共同相続人に限られます。ただし認められるには、事細かな証拠が必要になるようです。

 

さらに実際に意図的に遺産を隠し、最終的にそれを自分のものにしようとしたら……通常は横領罪など罪と問われますが、配偶者、直系血族、同居の親族との間で横領をしたとしても刑は免除となり、犯罪にはならず罰則はないというのが原則です。ただ申告をしなければ当然ペナルティの対象とるので、いずれは家族にもバレて糾弾されることになるでしょう。

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』

法テラス『遺言書には、どのような種類がありますか。』

法テラス『寄与分とは何ですか。』

e-GOV(横領 刑法第二百五十二条)

e-GOV(親族間の犯罪に関する特例  刑法第二百四十四条)