高級ホテルでドライヤーやバスローブ、ハンガーなどの備品が盗まれる…旅行業界で「インバウンドの客よりも悪かった」と囁かれる客層とは?

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物価が上がっている今、「値下げ」と聞くと消費者としてはうれしく感じるものですが一概に「良い」とは言えないようです。本記事では、「安売りプロモーション」の失敗例と成功例について、心理学者の越智啓太氏による著書『買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学』(実務教育出版)から一部を抜粋・再編集して解説します。

カルビーポテトチップスの低価格での市場投入

低価格帯の商品を投入して市場シェアを奪うという方法は危険ではありますが、成功した企業も少なくありません。そのひとつがカルビーで、ポテトチップス導入時にこの戦略を使用しました。

 

ポテトチップスの二大メーカーといえば湖池屋とカルビーですが、この二社はその売上シェアをめぐって日夜戦いを繰り広げています。ところで、ポテトチップスを日本において製品化したのは湖池屋が先です。

 

湖池屋は1953年に創業した企業で、1967年にポテトチップスの量産化に初めて成功しました。この商品はハイカラな商品として売れ始め(初めはおつまみとして、次第に若者向けおやつとして)、湖池屋はポテトチップスの代名詞になりました。

 

そこに新たに参入したのがカルビーです。カルビーは1975年に湖池屋から8年遅れてポテトチップスを発売しました。しかし市場シェアは湖池屋が握っており、この戦いは苦戦が予想されました。事実、この戦いに挑んだ明治、不二家、東ハトはすでに敗退していたのです。

 

そこで、カルビーは低価格戦略で市場に参入しました。当時、湖池屋のポテトチップスは150円だったのに対して、100円(当時は消費税がなかったので、本当に100円玉一枚でポテトチップス一袋が買えました)で発売したのです(ほかにも、湖池屋が東日本中心の販売だったのに対して全国展開をするなどの戦略も使用しました)。

 

翌年には、大規模な広告プロモーションも行いました。とくに「100円でカルビーポテトチップスは買えますが、カルビーポテトチップスで100円は買えません。あしからず」というコミカルなキャッチフレーズを、やはりコミカルで庶民的なタレントの藤谷美和子さんが口にするというテレビコマーシャルは大きな話題になりました(藤谷美和子さんはこのコマーシャルがきっかけで国民的なアイドルになりました)。

 

その結果、カルビーは湖池屋からシェアを奪うことに成功し、ポテトチップスのトップメーカーになったのです。

 

一般に低価格戦略はあまり良い手ではないと考えられていますが、このケースは明確な成功事例といえるでしょう。すでに市場で大きなシェアを占めている企業がある場合、後発の企業がそこに参入するためには、低価格戦略も有効になる場合があるというわけです。

 

他の業態では、回転寿司チェーンやヘアカットチェーンなども同様な方法で市場に食い込んでいくことに成功しています。この戦略が有効になる場合、有効でない場合はどのようなケースなのかについて、みなさんも考えてみてください。

 

 

越智 啓太

法政大学文学部心理学科 教授

 

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※本記事は『買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学』(実務教育出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学

買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学

越智 啓太

実務教育出版

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