人手不足の昨今、転職市場は求人数を伸ばしているようです。以前は、年齢が上がるにつれ、転職の難易度は増すといわれていましたが、ミドル世代であっても、経験豊富で即戦力となり得る可能性があることから、条件よく転職できている人もいます。ただ、転職前と後で、さまざまなシチュエーションで変化を感じることがあるようで……。本記事では、矢島さん(仮名)の事例とともに、長年勤めた会社からの転職における注意点について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
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すぐに収入を増やせないときは…

転職前は、自分の自由になるお金も多くあったので、欲しいと思っていたものはある程度買えていました。しかし、転職してからは、収入は減るも、支出は増え、欲しいものを我慢し、安いものを選んで買うようになったそうです。大手企業の福利厚生の手厚さは、普段実感しづらいところでも効いているのです。特に新卒から勤めている場合、環境が当たり前となり過ぎていて、ミドル世代となっても外の世界を知らない人も少なくありません。

 

転職して、家族との時間が増えたことや、やりがいのある仕事だったことには満足できました。しかし、就職活動中に貯蓄を崩していたことや、収入減と支出増で思うように貯蓄もできなくなり、現在は将来、特に老後への不安を感じるようになったのです。今回、筆者からは、

 

・生活費

・携帯電話料金

・住宅ローン

・生命保険

 

の見直しなど、現在の家計を点検して、支出を抑えられるものは抑え、将来の貯蓄ができるようにアドバイスを行いました。また、夫婦の老後のための貯蓄も、1社目で定年まで勤めた場合の定年退職金に比べ、現在の職場は少なくなります。そのため、企業型確定拠出年金の資産配分の見直しを行い、株式の比率を高めた運用で、大きく増やすことを考えた運用に変更しました。また、妻にもiDeCoに加入してもらい、夫婦で老後の資金を増やすことを考えていくことになりました。

 

子どもの教育費も、前々職では職場の積立をしていましたが、NISAで積み立てを行いながら、万が一のときには、NISAの拠出が継続できるよう、矢島さんを契約者・被保険者にした収入保障保険に加入することを助言。生命保険は、貯蓄性の保険や必要以上に保障が厚くなっているものを見直しし、社会保険をベースにして不足部分に応じて、見直しを行い、保険料を抑えました。

 

現在のようにNISAやiDeCoが多くの人に知られることになって、以前より投資を行うことに抵抗がない人も増えたと思います。しかし投資は短期的に大きな利益が出て、投資元本を下回ることは失敗だと思われている人も見受けられます。そんな不安があったときに、アドバイスを求めるだけでも、投資を継続していける可能性は高くなります。今回の相談のケースのように、転職によって収入だけではなく福利厚生の違いで支出が多くなるというケースも少なくないでしょう。ただ、お金の収支のバランスを考えて、使い方を見直すだけでも、自由に使えるお金が増える可能性もあるのです。

 

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表