1on1が苦手と思っている上司のなかには、上司が聞きたいことを部下に質問してしまっているケースが散見されます。しかしこれでは上司が中心の1on1になってしまうでしょう。1on1を「部下のための時間」にするにはどうすればよいのでしょうか? 本記事では、小川隆弘、氏による著書『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)から一部を抜粋・再編集し、部下にとって効果的な1on1について解説します。
上司は遮りがちな内容だが…なぜか部下が「語りたがる話題」とは?【キャリアコーチが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

成功例について「感情」「理由」「意図」の質問をする

成功例を語り続けてもらうためには、深掘りする必要が出てきます。この深堀りが質問です。深堀りするときは感情から聞くと、比較的抵抗なく部下は語りはじめることが多いでしょう。なぜなら、人間は感情を伴った出来事を強く記憶している確率が高いからです。しかも成功例ですからポジティブな感情です。そして感情・理由・意図を聞いてみましょう。これを「成功例の3連掘」と名付けました。3連堀とは、3回続けて質問を掘り下げていくやり方です。感情・意図・理由の順番でも問題ありません。ざっくばらんにいうと、感情を聞いたら、さらにツッコミを2回入れる(意図・理由)、ということです。重要なのは、部下の答えが出てこなくなったらやめることです。

 

行動約束(アクション)が成功した部下との対話例

上司「そのとき、どんな気持ちになったの?」

 

部下「いやー、それはうれしかったですよ」

 

上司「そんなにうれしかったのは、どうして?」

 

部下「……いっぱい練習したからかなぁ?」

 

上司「今回はそんなに練習したんだ。そこまで練習したのはどうして?」

 

部下「えー……このままでは、みんなに迷惑かけてしまうと思ったのかなぁ……」

 

上司「みんなに迷惑?」

 

部下「……僕だけちょっと低迷してるようですし……このところずっとよくないので……」

 

上司「そうなんだ! ……。で?」

 

部下「やっぱり……足は引っ張りたくないし……」

 

上司「Aさんはみんなの足を引っ張ってるって感じてるの?」

 

部下「え? うう~ん……」

 

成功例(自慢話)の3連堀のコツは2点

1つ目は、質問を感情・理由・意図と3回聞くことです。部下の語りが得られた場合は、さらに3連堀を続けます。感情・理由・意図のどれを聞いてもかまいません。とにかく3連掘りしてみるのです。

 

2つ目は、部下からあまり語りが得られなかった場合、そこでやめることです。それ以上の深堀りはしません。ほかの話題に切り替えましょう。なぜなら、1on1は継続する必要があることと、安全安心の場にする必要があるからです。それ以上の深堀りは相手が詰問に感じることが多いようです。

 

上記の対話例では、「そこまで練習したのはどうして?」が3つ目の質問になります。この質問に対して部下は語ってくれたので、そこからさらに質問を続けています。つまり、部下が語ってくれているあいだは質問を続けて大丈夫、ということです。対話例では6つ目の質問で語りが途絶えてしまったため、上司はそこでやめました。

 

1on1は年単位で継続していくものです。部下にとって安全安心の場にするためにも、話しやすい場にする努力が必要です。語りが止まった段階で、その話題からいったん離れるのは大事なことでしょう。
 

 

小川 隆弘、

キャリアコンサルタント、コーチ、研修講師

 

※本記事は『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。