話を引き出すためには
20秒ほどの沈黙
部下「あのう……Bさんが久保先生に貸しをつくってたからなのか、久保先生が〇〇製品に興味があったからなのか、よくわからないんです」
上司「ふうん。なるほどね……けっこう冷静に見てるね」→上司は感心した表情
部下「あっ、はい」
上司「……で?」
部下「……先生への貸しと〇〇製品への興味と両方ではないかと……」
上司「うん」
部下「特約店さんの意向もあったと思います」
上司「というと?」
部下「うちの特約店担当者のCさんのおかげかと……特約店の支店長にもお願いされてましたから……」
上司「Aさんは謙虚だね。Cさんの力と〇〇製品の製品力を、この際上手に活用していくのも、きみの力だと思うよ。我が社の営業は日本中どこでも、Cさんのような存在がいるよ。条件は同じ。同期もみんな同じ土俵のなかだよ」→上司はAさんに自信をつけさせようとしている
部下「はい……ありがとうございます……」
上司「Bさんは多くのメーカーや競合製品があるにもかかわらず、Aさんと〇〇製品を選択したってことだよね」
部下「まあ……はい」
上司「Bさんなりの理由があったんじゃないのかなあ?」
部下「……」
20秒ほどの沈黙
上司「まっ、よかったね! 説明会が取れて、どんな気分?」
部下「はい! ……えーっと、あのう、よかったです」
上司「うん」
部下「あのう、説明会の回数は、あと2回ですよね」
上司「あっ、うん」
部下「あのー、いま2軒交渉中です」
上司「いいねえ。がんばってるね!」
部下「いえ、まだお願いしたばかりで、……まだ決まったわけではないので……」
上司「どう今後の見込みは?」
部下「はい、なんとか……あと3か月ありますので、5回できるようにがんばります」
上司「6回やったら、どうなるか覚えてる?」
部下「はい……その項目で行動評価が4点になったと思います」
上司「よく覚えてるね!」
以上、対話シーンを見ていただきました。
あえての「沈黙」
上記の対話で上司はAさんから話を引き出そうと、いろいろと工夫しています。意図的に沈黙し、Aさんから言葉が出るのを待っているのです。同時に定性評価をティーチングしています。
1on1の経験が浅い時期は、上司も沈黙を避けたくなるのがふつうです。しかし一般的には、部下は上司以上に沈黙を避けたいと考えていることでしょう。上司があえて沈黙することで、部下の経験学習や内省がさらに深まる場合もあります。上司に沈黙するスキルが身につくと強力な武器となるのです。まずは沈黙に慣れ、できれば活用しましょう。