石破氏と小泉氏は経済政策の「適正解」を持っていない?
日本経済がデフレ脱却の正念場を迎えた時に、石破氏と小泉氏が経済政策に適正解を持っていないということは驚きである。
両氏は経済政策の設定段階で大きなミスをしてしまったといえるだろう。両氏に任せておいたら、岸田政権の新しい資本主義・積極財政・アベノミクス路線からから、新自由主義・財政再建優先・金融規律重視の反アベノミクス路線に変わるリスクが高まる。
2013年のアベノミクスから10年を経て、打ちひしがれていた日本の稼ぐ力は、大きく向上した。
日本人が稼ぐ所得総額(名目GNI)は647兆円、前年同期の630兆円比2.7%増、前々年同期の593兆円比9.1%増と鋭角的に拡大した。円安インフレの進行と、日本企業のグローバル化による海外利益急増に支えられている。名目経済成長に連動する企業利益は2.2倍、株式時価総額は3.3倍、一般会計税収は1.6倍になった。
しかし他方で、個人生活が取り残されてきた。実質個人消費支出は、過去10年間では、2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月がピークで、その後一度もそれを上回っていない。
この好調な業績・株価と低調の実質消費との乖離をどのように埋め、デフレ脱却を確実にするか、物価と賃金がともに上がる経済の好循環を実現するか、今はまさに正念場となっている。
8月の大暴落が戒める尚早の引き締め政策
7月末の利上げと、植田日銀総裁の“前のめりの金融引き締め発言”が、25%、10,500円という驚愕の「日経平均株価暴落」を引き起こした。翌週の内田副総裁の「わざわざ危ない時に利上げしない」との打ち消し発言で株価が急回復したことから、株価急落は尚早の政策転換を戒めたものであったことは明らかである。
にもかかわらず8月中に、植田総裁、高田、中川、田村各審議委員がこぞって、利上げバイアスのスピーチを行い、市場の疑心暗鬼を強めている。
日本は尚早の金融財政の引き締めが回復の腰を折り、失われた10年で済むはずが、失われた30年になってしまったという苦い経験がある。
日本の土地と株式を合計した国富時価総額は、1989年末に3,142兆円でピークをつけ、2002年末の1,723兆円で一旦底入れして回復に転じた。だが、リーマンショックのあとさらに下落し、2011年末に1,512兆円となった(なお、2023年末では2,410兆円と顕著に回復している)。
この二番底は、正しい政策を取っていれば回避できたはずである。
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