一昔前の葬儀は、故人に縁のあった人に広く声をかけるなど盛大に営むこともめずらしくありませんでした。しかし、現在は家族葬、一日葬、直葬など、葬儀の簡素化が進んでいます。こうした小さな葬儀には費用が安いといったメリットがある一方で、後悔するケースもあるといいます。そこで本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、簡素化された葬儀のリアルについてご紹介します。
Q2. 自分や配偶者が亡くなったら家族葬にしたいと思っていますが、後悔はしないでしょうか?
A2. 親しい人たちでゆっくり見送れますが、注意しておきたい点もあります。
前項で見たように、今や葬儀の半数程度が家族葬となりました。家族葬といっても、参列者が家族でなければならないわけではなく、家族や親族だけでなく、親しい友人・知人などが参列する場合もあります。20〜30名程度の規模で行われることが多く、親しい人のみで故人をゆっくりと見送れるのが人気の理由のようです。
また、親戚付き合いや近所付き合いの希薄化、故人の高齢化によって関わりのあった人がすでに亡くなっていたり、高齢で参列できなくなっていたりという理由もあります。
最近では、小規模な家族葬向けに特化した葬儀場も増えており、遺族が故人との最後の時間をくつろいで過ごせるように配慮した建物となっている場合もあるようです。
■家族葬のリアルと注意点
葬儀費用についても、祭壇や斎場の規模が小さくなるため、一般葬と比べて費用を抑えられます(宗教者に対するお布施などは一般葬と同様にかかります)。
とはいえ、葬儀費用そのものは抑えられても、家族葬は参列者が少ないため、香典も少なくなります。葬儀費用を参列者からの香典でまかなうと考えた場合、施主側の負担としては一般葬のほうがじつは持ち出しが少なかったというケースもあります。
もう一点、考えておくべきなのが、葬儀後の対応です。
葬儀後に故人の死を知った親族や知人などが、「葬儀に呼ばれなかった」として不満を感じるケースや、「故人に線香をあげさせてほしい」と自宅に弔問客がくるケースもあります。これらは葬儀後の対応になるので、「これなら普通の一般葬をしておけばよかった」と後悔する方もいます。
また、故人とゆっくり向き合うために家族葬を選んだのに、実際はあまり時間の余裕がなく、葬儀後に「本当に家族葬でよかったのか」と自問自答する方もいるようです。
葬儀はやり直すことのできない儀式です。一般葬と家族葬の特徴をよく理解して、後悔のない選択をしましょう。
松尾拓也
行政書士/ファイナンシャルプランナー
行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家。行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役。1973年北海道生まれ。
父親が創業した石材店で墓石の営業に従事する傍ら、相続や終活などの相談を受けることが増えたため、すでに取得していた行政書士資格を活かし、相続・遺言相談をメイン業務として行うようになる。信条は、相談者からの困り事に「トータルで寄り添う」こと。
家族信託や身元保証など「新しい終活対策」についても積極的に取り組み、ライフプランや資産管理などの相談に応えるためにファイナンシャル・プランナー、住み替えニーズなどの相談に応えるために宅地建物取引士の資格を取得。ほかにも家族信託専門士、相続診断士、終活カウンセラー、お墓ディレクター1 級、墓地管理士など、終活にまつわるさまざまな資格を取得する。
経営する石材店では、おひとりさまやおふたりさまに好評な樹木葬や永代供養墓、ペットと一緒に入れるお墓など多様なニーズに応える墓苑を運営している。また、インテリアに合うモダンな仏壇の専門店も開設し、現代のライフスタイルに寄り添うご供養を提案している。
さらに地域ぐるみで終活に取り組む必要性にも着目し、他士業の専門家と連携した終活サポートチームを結成。終活セミナーなどの啓蒙活動に取り組むとともに、地域の行政に働きかけて独居高齢者の終活情報登録制度をスタートさせるなど、多方面で活動の場を広げている。
一人ひとりの「ライフエンディングシーン」(人生の終末期)で、最も頼りになるパートナーとなるべく、全方位視点で積極的な事業展開を行っている。趣味は本と酒と旅、ちょっと古めのクルマとバイク、座右の銘は「遊ぶように仕事し、仕事するように遊ぶ」。普段から「サムシングエルス(何か別の価値)を提供する」ことを大切にしている。
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