利益が出ないまま、約1,200万円が投資に消えた
妻と本稿冒頭の会話をしたのは、この翌日のことです。気が気でない誠さんは、これまでの投資額を計算してみることにしました。
Aファンドに年間投資枠で240万円、B株に400万円+320万円+200万円=920万円……投資額は1,168万円(手数料などは除く)にのぼります。
退職金の半分近くを投資に費やしてしまった……自業自得とはいえ、この先いったいどうすればいいんだ……青ざめた誠さんは、このままではまずいと、古くからの知り合いであるファイナンシャルプランナーの筆者のもとを訪れました。
退職金はあくまで「老後の生活資金」
日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年3月末時点)」によると、証券会社10社の2024年3月末時点での新NISA口座数は約1,456万口座と、2023年3月末~2024年3月末の1年間で約1.3倍に増えています。また、2024年1~3月期の新規口座開設件数は約170万件と、前年同期と比較して約3.2倍に増えています。
実際、筆者のところにも「退職金を使って資産運用を始めたい」という相談は多くあります。特に新NISAが注目されるようになってからは、投資初心者からのこういった相談が増えました。
しかし、筆者としては、退職金は基本的に老後の生活資金の一部として、あらかじめ4分割して計画的に使うことをおすすめしています。
<退職金の4分割例>
①退職してから公的年金を受給するまでの生活資金
②公的年金受給後の生活資金
③借入金などまとまった額の返済資金
④余剰金
繰り返しになりますが、退職金は大事な老後資金です。公的年金が受け取れるようになってからは、生活資金は主に公的年金から捻出することとし、不足分は貯蓄や企業年金、個人年金保険などを計画的に取り崩して使います。それでも不足する場合、退職金も使うといいでしょう。
また、③のように、住宅ローンなどの借入金を退職金で返済するのも有効です。ただし、元利均等返済の返済末期は、ほとんど元本分の返済となり、利息を軽減する効果は乏しいです。また、1度に返済すると、その分手元に現金がなくなることになりますから、返済の仕方には注意が必要です。
④は、老後の自宅リフォームや介護などの費用を①②から計上したあと、足りないようであればここから捻出します。
子どもに相続するのもひとつの手ですし、退職後にはじめて資産運用をするなら、この余剰金を資金にします。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>