(※写真はイメージです/PIXTA)

SNS上では、肖像権にまつわるトラブルが後を絶ちません。肖像権を侵害された場合、罰則の適用などはあるのでしょうか? また、SNSで肖像権を侵害されたら、どのような手順で対応すればよいのでしょうか? 本記事では、肖像権侵害の罰則やとり得る法的措置、侵害された場合の対応などについて、Authense法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

SNSで肖像権を侵害された場合の対処法

SNSで自身の肖像権を侵害されていることに気付いたら、どのように対処すればよいのでしょうか? ここでは、誰であるかわからない匿名アカウントから肖像権侵害が疑われる投稿がされたケースを前提に、一般的な対処の流れを紹介します。

 

侵害行為の証拠を残す

肖像権を侵害する内容の投稿を見つけたら、その場ですぐに証拠を残してください。権利侵害の証拠がなければ、法的措置を講じることが困難となるためです。すぐに証拠を残さなければ、投稿者が投稿を消したりほかのユーザーがSNS運営者に「通報」したりして、問題の投稿が消えてしまうかもしれません。

 

SNS上での問題投稿の証拠は、スクリーンショットの撮影で残すことが一般的です。スクリーンショットは、次の事項が漏れなく掲載されるように撮影してください。

 

・肖像権侵害にあたると思われる投稿の内容
・その投稿がなされた日時
・その投稿と関連する前後の投稿やコメント
・投稿の固有URL
・投稿をしたアカウントの名称、ユーザー名、URL

 

スマートフォンからの撮影の場合はURLの表記が不完全となることがあります。そのため、可能な限りパソコンからの撮影をおすすめします。なお、この段階で投稿者に直接削除を求めるなど、相手と直接対峙するような行為は避けたほうがよいでしょう。相手に直接コンタクトを取ると、肖像権侵害や誹謗中傷がエスカレートするおそれがあるためです。

 

また、言い返した内容によっては法的措置をとるにあたって不利となったり、「誹謗中傷」などとして相手方から反対に法的措置をとられたりするおそれも生じます。

 

弁護士へ相談する

肖像権を侵害する投稿の証拠を残したら、できるだけ早期にインターネット上でのトラブル対応などにくわしい弁護士へご相談ください。弁護士へ相談することで、そのケースにおける損害賠償請求の可否や見込み額などのアドバイスを受けられます。

 

また、実際に法的措置を講じようにも、自身で法的措置をとることは容易ではありません。弁護士へ相談することで、その後の対応の見通しが立てやすくなるほか、依頼した場合はその後の対応を任せられるため安心です。早期の相談をおすすめする理由は、投稿のログは永久に保存されるわけではなく、一定期間が経過することで消えてしまうためです。

 

保存期間を過ぎてしまうと、もはや相手を特定することは困難となります。ログの保存期間はプロバイダによって異なるものの、おおむね3ヵ月から6ヵ月程度とされています。保存期間内に投稿者の特定手続きを進めるため、できるだけ早期にご相談ください。

 

投稿者を特定する

SNSでの肖像権侵害は、匿名や偽名で行われることが少なくありません。その場合は、損害賠償請求をする前に、相手の特定が必要です。相手が誰であるのかわからなければ、損害賠償請求をすることが困難であるためです。投稿者の特定は、次の2つのステップで行います。SNSの運営者は、投稿者の住所や氏名などの情報までは把握していないことが多いためです。

 

1.肖像権侵害の舞台となったSNSの運営者に請求し、投稿等のIPアドレスやタイムスタンプなどの情報を入手する
2.投稿者が接続に使ったプロバイダに請求し、契約者の住所や氏名などの情報を入手する

 

これらの請求は、SNS運営者や接続プロバイダに直接行っても、開示に応じてもらえることはほとんどありません。そのため、裁判上で発信者情報開示請求をすることが一般的です。なお、2022年10月に施行された改正プロバイダ制限責任法により、2つのステップを一つの手続きでまとめて行える「発信者情報開示命令」が創設されました。

 

ただし、新設された手続きによって期間が大きく短縮できる場合もある一方で、プロバイダ側の出方によってはむしろ従来よりも時間がかかる可能性があります。そのため、いずれの手続きを選択するかは、弁護士に相談したうえで慎重に検討してください。

 

損害賠償請求をする

肖像権侵害をした投稿者が特定できたら、投稿者に対して損害賠償請求をします。損害賠償請求はいきなり裁判を申し立てるのではなく、まずは弁護士から書面を送るなどして裁判外での解決を図ることが一般的です。

 

この時点で相手が請求額を支払い謝罪に応じた場合には、裁判に至ることなく解決となります。この場合は、示談金の額などとともに、再度肖像権侵害をしない旨などを記載した示談書を取り交わすことが多いでしょう。

 

一方、相手が請求に応じない場合や投稿の事実を否定するなど不誠実な態度をとる場合には、裁判上での請求へと移行します。裁判上の請求となった場合は、裁判所が損害賠償請求の可否やその適正額を決めます。裁判所が損害賠償を認容したにもかかわらず相手が期限までに支払わなかった場合は、差し押さえなど強制執行の対象となります。

まとめ

肖像権侵害の罰則や肖像権侵害に対してとり得る法的措置、肖像権侵害をされた場合の対処法などを解説しました。

 

肖像権は法律に明文化された権利ではなく、たとえ侵害されても罰則の対象にはなりません。一方で、差止請求や損害賠償請求の対象となる可能性があります。とはいえ、実際のケースで損害賠償請求の可否などを自分で判断することは容易ではないでしょう。肖像権を侵害されてお困りの際は、早期に専門家へ相談したうえで、対応の見通しを立てることをおすすめします。

 

 

Authense 法律事務所

 

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