老後資金をコツコツ堅実に貯金しても、全く安心できない理由
「老後2,000万円問題」ではなく、「老後資金4,000万円不足する時代になる」というニュースが話題になっています。これは、2019年に話題になった「老後資金2,000万円不足問題」を例に、物価上昇率3.5%が20年続いた結果、実際には老後資金が4,000万円不足するというシミュレーションです。
大切なのは、必ずしも「4,000万円貯めなければならない」というわけではなく、今の時点で自分が将来いくら必要になるのかを理解し、そのためにお金をどこに置くかを考えることです。
例えば、50代の夫婦がコツコツと貯金を続けてきたとします。子どもは独立し、老後を考える年代です。贅沢はできないかもしれませんが、温泉や旅行を楽しむ安定した老後を思い描いているでしょう。65歳までに退職金も含めて2,000万円の預貯金ができ、さらに働くつもりで安心しているかもしれません。しかし、そこには「思わぬ落とし穴」があるのです……。
事例:
・一郎:58歳・会社員、和子:55歳、パート
・長男:27歳、長女:25歳(ともに独立)
・一郎さんが65歳時点の預貯金は退職金含め2,000万円
・住宅ローンなどの借金はなし
老後2,000万円では不足する“本当の理由”
一郎さん夫婦は、金融庁のワーキンググループが報告書で示した「老後資金2,000万円問題」について認識していました。「借金もないし、65歳までに預貯金が2,000万円あれば安心」と妻の和子さんとも話していました。
一郎さんは、仕事一筋で真面目に働いてきたため、お金の管理は妻に任せっきりでした。「預貯金で2,000万円あれば大丈夫だろう」と深く考えていなかったのです。大学卒業後に就職し、出世とまではいかなくても、コツコツと真面目に働いて安定した収入を得てきました。このまま定年まで働き続ければ、65歳の頃には退職金を含めて預貯金が2,000万円を超えるだろうと楽観視していたのです。
金融投資に関しては、「元本割れのリスクがあるくらいなら、預貯金が一番安全だ」という考えです。ニュースなどで詐欺や株価暴落の話を聞くたびに、「投資なんてお金持ちのやることだ。わざわざリスクを背負う必要はない」と妻に話していました。金融投資=リスク、株=怖いもの、銀行=安心という思い込みから、投資は選択肢に入っていませんでした。
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