事例2:軽い気持ちで犯罪行為
CASE:高校生です。飲食チェーン店で、友人がテーブルの調味料のボトルを舐めたりするのがおもしろくて、撮影してSNSにアップした。
ANSWER:刑法の偽計業務妨害、器物損壊にあたります。また民事的にも追及される可能性があります。「仲間内でウケるから」「SNSでバズりたい」などの軽い動機からそんなことをしても、誰も得しません。
解説:「迷惑動画」=「犯罪動画」
投稿された動画は犯罪の証拠動画2023年1月、回転寿司チェーン店で、備え付けの醤油の差し口や未使用の湯呑みを舐め回して元の位置に戻したり、回転レーン上の寿司に、指につけた唾液を何度も擦りつけたりする様子を投稿した少年の動画が炎上。そのチェーン店の株価は暴落し、一時、時価総額が160億円以上も下落したとされる大損害を被りました。この事件では、会社が少年に対し損害賠償請求訴訟を提起したほか、警察が器物損壊罪で少年らを書類送検し、検察庁は家庭裁判所に送致しました。このような「迷惑動画」の内実は「犯罪動画」であり、犯罪の動かぬ証拠です。刑事・民事ともに重い責任を負い、深く反省しても、デジタルタトゥーにより今後長きにわたって人生がうまくいかない可能性もあります。他人が同じことをしたら自分はどう感じるか、誰かに迷惑がかからないかということをよく考えて行動することが重要です。
<ポイント> デジタルタトゥーを完全に消すのは難しい
デジタルタトゥーとは、インターネット上に流れた情報やコメント、動画は、完全に消去することが難しく、半永久的に残るという現象のことです。最近は、企業が人を採用する際、名前をネットで検索して過去に犯罪歴がないかどうか、SNSで不適切な投稿をしていないかなどを調べることも多いようです。単なる悪ふざけのつもりが、取り返しのつかないことになりかねません。ただし、そのような情報がネットに残り続けることには問題もあります。重大犯罪や公共性のある情報ならともかく、罪を償って新たに出発することもとても重要だからです。「忘れられる権利」と呼ばれているものです。最高裁は、検索結果の表示の社会的意義と比較し、個人のプライバシー保護が明らかに優越する場合には削除が認められるという判断をしています。
関連条文
刑法 第231条 侮辱
刑法 第233条 信用毀損および業務妨害
刑法 第234条 威力業務妨害
刑法 第261条 器物損壊等
1. 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、または傷害した者は、3年以下の懲役、または30万円以下の罰金、もしくは科料に処する。
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長
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