2024年8月に入ってから、日経平均株価の乱高下の話題で持ち切りです。投資家……なかでも新NISAスタートと同時に投資デビューをした投資初心者たちにとっては、気が気でない人も多いでしょう。このままNISAを続けるべきなのか? そんな疑問を抱えているかもしれません。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、投資を続けていくべきか否かの判断基準について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
「メンタルが持たない」「怖い」「騙された」NISAデビューも、早々に狼狽の投資初心者たち…インデックスファンドを買っていた、世帯年収970万円・30代夫婦による〈大暴落後〉の速やかな英断【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

今後もNISAを続けても大丈夫なのか

この2週間ほど、家計の専門家であるFPのもとには「今後もNISAを続けても大丈夫か」という相談が数多く寄せられます。その多くはつみたてNISAを数年にわたって継続している方々で、ほぼ全員がインデックス型のファンドを買っています。

 

「続けて大丈夫か」というのは「損をして元本を大きく毀損させるのが不安」という意味でしょう。その意味では、FPは今後の値動きを断言する立場にはありません。

 

1920年代の世界恐慌をはじめとして過去に〇〇ショックと呼ばれるような大暴落を何度か経て、その都度数年かけて回復。大きな流れとして株価が上昇してきたという事実は説明できるものの、それをもって投資を続けるべきかを一般論にして断言するほど無責任なことはありません。

 

残念ながら専門家であっても、断定的な物言いをする人が非常に多いのが投資の界隈です。YouTuberやブロガーはなおさら強い物言いになりがちです。断定的な意見や強い言葉に安易な共感をせず、いったん聞き流しておくべきでしょう。断定的な意見が心地よく聞こえてしまうのは、自分が勉強不足であるせいかもしれません。初心者はNISAを続けるべきかどうかを考える前に、自分にとって投資とはなにか、再定義するいい機会ではないでしょうか。

 

この2週間、強い不安を感じパニックに陥った人に共通する特徴があります。株価の乱高下でパニックに陥った人に共通するものには、次の3つの特徴が挙げられます。

 

・自分が買っているファンドのルールと仕組みを理解していない
・投資額が自分の家計に合っていない
・預貯金に置いておくべきお金まで投資に回している

 

特に投資額が家計に対して無謀な人ほど、パニックを起こしたようです。家計簿をつけていないのに毎月の積立額を感覚だけで決定していれば、大暴落で不安にならないわけがありません。価格変動のリスクを冷静に分析できなくなるからです。また、手元に置いておくべき預貯金まで投資に回した人もパニックに陥りました。老後資金以外で必要になる時期がはっきりしているお金を投資に回すのは、無知としかいえません。

 

たとえば子供の大学資金は18歳で必要になります。自宅のメンテナンス費用や自動車の買い替え時期も正確な予測ができるはずです。このように使う時期が決まっているお金は普通預金に入れておくべきものです。しかし、これを預貯金にとどめておかず投資に回してしまうと、必要なときに大暴落が起きて損を出していても売却しなければならないという状況に陥ります。

 

収入が給与所得だけの会社員の場合、投資に収入の多くを回してもいいのは、自宅を持たない、家族を持たない、自動車を持たない、恋人と交際しない、大きな旅行もしない、などというライフスタイルの人だけのはずです。

 

「住宅ローンの変動金利よりも、投資の利回りのほうが高いので、住宅資金はフルローンで借りて手元の現金は投資に回すべき」という意見が流行った時期がありました。しかし、低金利がいつまでも続くことを大前提とした机上の空論です。金融商品を販売する業者のポジショントークに過ぎませんでした。住宅ローンの変動金利が上昇したときは、手持ちの現金を使って一部繰上げ返済をし、元金を減らすリスクヘッジが最適解になります。リスクヘッジのための現金を投資に回してしまうと株価の大暴落でパニックを起こすのも無理はありません。

 

こう考えると、一般的な世帯年収の方にとって、投資に回せるお金はさほど多くないと気づくはずです。資金に大きなゆとりのある世帯でもない限り、老後資金の一助としてごく少額のお金を投資に回すだけが精いっぱいのはず。特にいますぐに現金で自動車を買えない人、自動車ローンを借りないと買えない人は、NISAをはじめとした金融投資は不向きです。自動車の購入をいつもローンに頼っているということは、家計収支に問題があるか、資産形成のポートフォリオに欠陥があるか、です。

 

ここで投資を続けていくべきか岐路に立たされている、ある会社員の事例をご紹介します。