老後資金への不安感が募るなか、給料以外で収入を得るため、投資を行うサラリーマンが増えています。新NISAの拡充により、この動きは加速しました。しかし、2024年8月の株価乱高下を受けて、いまの投資方針で問題ないのか、と不安に思う人も少なくありません。そこで本記事ではサラリーマンの資産形成としての「不動産投資」について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
「ふつうのサラリーマン」が銀座の高級不動産に投資する方法【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

日経平均株価の乱高下に揺さぶられる投資初心者たち

投資環境の先行き不透明感が増しています。2024年8月に入ってからの日経平均株価の乱高下は、経験の浅い個人投資家の不安感を大きく揺さぶりました。新NISAがはじまり、投資経験のない人たちが投資に参入したものの、価格が乱高下するという投資の本質を突きつけられたのではないでしょうか。

 

当然ながら右肩上がりでずっと増え続ける投資はありません。また、「下がったとしてもまた必ず上がるので大丈夫」というわけでもなく、資産形成に失敗し自分の老後資金が崩壊されることも十分ありえるのです。

 

では、今回のような相場の乱高下に備えるには、どうすればよいのでしょうか? ひとつ、有効な手段として考えられるのが、種類の違う投資も組み入れるということです。

 

投資は大きく2種類にわけられます。1つは、株式や有価証券、FXなどを投資対象とする金融投資。新NISAも金融投資に含まれます。もう1つは、金や美術品、不動産など、有形物の購入・所有・転売を行う現物投資です。ここでは、投資を分散させるのための投資として、現物投資のなかでも「不動産」に焦点をあてて解説していきます。

不動産投資

資産形成を考える人であれば、一度は不動産投資を検討したことがあるかもしれません。不動産投資と聞くとこんな連想をする人が多いと思います。

 

「ワンルームマンション投資を勧誘されて失敗した同僚がいる」

「アパート経営なんて高齢者が相続対策でやることでしょ」

 

不動産投資は失敗しやすい、相続目的でやるもの、というイメージになりがちです。しかし、本当にそのとおりなのでしょうか? 順番にメリットとデメリットをみていきます。

 

メリット

不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資です。株式投資のように、なにかの拍子に巨額の利益を手にするようなことは起こりませんが、安定した家賃収入(インカムゲイン)を得つつ、いずれ売却益(キャピタルゲイン)を得て手じまいにするというリスクが比較的低い投資になります。

 

また、インフレによって資産が毀損することがないのもメリットです。現金はインフレによって実質の価値が下がっていきますが、不動産という「モノ」の値段と価値は上がっていきます。
 

デメリット

不動産投資の最大のデメリットは、「元手資金が多額であること」です。つみたてNISAのように毎月定額を積み立てるようにはいきません。大きな資金を準備して、まずは不動産を購入しなければスタートできないのです。空き家となった実家を相続で手に入れて不動産投資をスタートするようなケースでなければ、多くは銀行からの借入をして物件を手に入れています。そのため、不動産投資を始められるのは銀行が融資してくれる属性の人(=安定した高収入のある会社員)だけの特権になります。収入が低かったり、マイホームのための住宅ローンをすでに借りていたりすると、不動産投資のための融資は極めて難しくなります。

 

また、現物の不動産を自分で所有し運用するには、実務がかなり煩雑になるのもデメリットです。建物の維持管理、入居者のトラブル対応、納税、入居者の募集などの日常業務があり忙しくなります。さらには孤独死や殺人などの事件が起これば物件の価値が毀損してしまいます。心理的瑕疵物件を公表するサイトもあり、物件の過去の問題を隠し通すことはできません。そうなると家賃の設定を見直す必要が出てきます。