2週間のうちに起きた「日経平均株価の乱高下」
今回の日経平均株価の大幅下落では、「大暴落」という言葉だけが目立ちますが、実際には短期間での乱高下という表現のほうが正しいかもしれません。
8月5日に東京株式市場は史上最大の下落幅を記録しました。日経平均株価は取引開始直後からほぼ全面安の展開となり、終値は前の週末に比べて4,451円安い3万1,458円に。しかし翌日8月6日には一転、3,217円高という終値ベースで過去最大の上昇幅を記録したのです。
投資家のパニック状態を表す指標に、日経平均ボラティリティー・インデックス(通称、恐怖指数)があります。これが30を超えると、投資家が株価の大きな変動を見込んでいるとされています。8月2日から上昇をはじめ5日には72に達し、8月14日にかけて31.32まで再び下がっていきました。8月に入ってから約2週間、投資家はパニック状態にあったといえます。
投資初心者は狼狽
この期間に、投資の初心者、特に新NISAから始めた方々は「メンタルが持たない」「怖い」「騙された」「新NISAは国の陰謀だった」などと阿鼻叫喚の様相でした。数日間で資産額を大きく減らし、それが「年収と同じくらい」「手取り月収と同じくらい」とイメージしてしまうと、もう投資をやめたいという思いに駆られるかもしれません。
NISAの制度が始まってから各メディアで沢山取り上げられたため、初めて投資に興味を持った人たちも多いでしょう。しかし投資と金融についての体系的な勉強をしないまま「ほったらかし投資」をしている人は、市場が乱高下すると簡単にパニックに陥るものです。
勉強が足りていないのは、金融知識がYouTuberやインフルエンサーからの情報だけという人たちも同じです。金融の専門家でもないネットの有名人が、「NISAを続けても問題なし!」と強い言葉で断言すると、つい疑問も持たずに鵜呑みにしてしまうのです。知識や論理的思考に基づいていないため相場が荒れると、より強い意見を求めていく傾向があります。
日本では長年、普通預金での貯蓄を優先してきたため、まだまだ多くの人が投資に馴染みがありません。義務教育での金融教育も世代によっては皆無で、圧倒的多数の人たちは金融、特に投資についての知識をどうやって身につけるのかさえわからないままでしょう。今回の株式市場の乱高下によって、日本人の金融リテラシーがないがしろにされたままNISAの制度が前のめりになっているという「いびつさ」が露見したのではないでしょうか。