対話するうえでの「頷き」の重要性
以前、私の事務所に本当にリアクションが素晴らしい女性スタッフがいました。ある時、私が仕事上、納得できないことがあって、その理不尽さについて彼女に説明すると、ウンウンと大きく上下に頭を振って、聞き入ってくれます。すると、心が軽くなり、いつの間にか表情が緩んでしまう自分がいるのです。
このように、頷きとは相手を肯定し、受け入れるという率直な意思表示であり、これに救われた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか? 「私は今、あなたの言うことをわかろうと努力していますよ」というのは、目の前の人への温かい思いやりだと思います。決して同調する必要はなく、まず、しっかり相手の言うことを聞いた上で、反論するならすれば良いのです。
頷きができるようになったら、次は声に出しての「相槌」に移りましょう。実際、コミュニケーションにおける相槌の効果は心理学の研究でも実証されているそうで、それによって話し手の発言は1.5倍も増えると言います。良い相槌で、相手がどんどん話してくれるようになるのなら、試さない手はありません。最初は、「はい」や「ほう」や「へえ」といった簡単なものでいいのです。その次は、「いい天気ですね」に対し、「ほんとにいい天気です」と、オウム返しでも十分効果があります。
たとえば次のようなやり取りで、あなたをA、相手をBとして――
A「いいネクタイをしてらっしゃいますね?」
B「これ、とても気に入っているんです」
A「ほう、どんな点で?」
B「実は40歳の誕生日に家族がプレゼントしてくれまして」
A「素敵ですね。どちらでお買い求めに?」
B「いつも行く○○デパート、あそこは品揃えがいいんです」
こんな風にちょっとした質問の時にリアクションも挟めれば、もう中級クラスです。
その際にしっかり聞いてほしいのは、相手の言葉です。そこにリアクションのヒントがありますから、対話の際はそこに集中してこそ、テンポのいい反応につながります。インタビュアーでも不慣れな人ですと、相手が話しているのに次の質問をあれこれ考えていて、話に集中できていないことがあります。それでは対話はなかなか弾まないでしょう。「言葉尻をとらえる」というと、いい意味ではないですが、まずは相手の言葉の中にリアクションの材料があるという意識を大切にすることです。
「相槌を打つ」とは、もともと刀工の方が師匠の打つ槌に合わせてと弟子が槌を入れる鍛錬からきているそうです。師匠と弟子で、カンカン、カンカン……と槌を振るって刀を鍛える様子を、対話に活かせたら素晴らしいですね。共感に溢れ、テンポのいい対話のため、皆さんもぜひいい槌を振るって下さい。