良い「聞き手」になってみよう
コミュニケーションの際に最も大切にするべき「共感」をどのように生み出したらいいか――対話というのはそもそも自分と相手の双方があって成り立つもの。その役割や立場は刻々とチェンジし、話し手である自分は、相手の発言に対しては良き聞き手となることが、さらにお互いの距離を近付けることになるのは当然のことです。そこで大切にしたいのが、聞き手としての“リアクション”です。
実は、私にも「乗って」いける講演会とそうではない講演会があります。お客さんのリアクションに左右されるのですね。出だしから弾んでいけるのは、女性のお客さんの多い場合。「女性セミナー」はまず大丈夫、話す前から乗っていけるのです。
ステージに立った途端、満面の笑みで拍手をいただき、手を振って下さったり、名前を呼んで下さったり。その後は、お隣さんと感想の交換。話し始めると、客席はすぐに笑いと拍手に包まれ、時に涙を流して下さる。これが、男性の比率が高まるにつれ、どんどんリアクションが薄くなってしまうのは不思議です。日本の、特に年配の男性は、どうも「人前で笑うのは恥ずかしい」と思っている節があります。
リアクションと言えば、実は私も新人アナウンサーの頃、随分、苦労しました。初めて担当したラジオ番組は、噺家さんとの生放送でした。その際の私の最大の課題は笑い声。どういうことかと言いますと、テレビは笑顔でリアクションすれば、「あっ、この人、楽しいんだ」と画面から伝わりますが、ラジオでは微笑んでいても、それが全く見えないし、伝わりません。音にしなければ、リアクションゼロと同じになるのです。
そのため、「声を出してはっきり笑うように」とディレクターから注文が出ました。しかし、皆さんもやってみて下さい。楽しそうに大声で笑うのって、結構難しいのです。私は3カ月ぐらい鏡の前で、練習しました。そして、今日の「アッハハハハ……」という豪快な笑いを手に入れたわけですが、おかげで夫からは「うるさい!」と注意を受けることもしばしばです(笑)。
話を元に戻しますと、講演中、何百人というお客さんの中で、どこを見て話しているのか? なるべく右見て、左見て、全員を見渡すようには気を配っていますが、ついつい視線は熱心に話を聞いてくれる人のほうへ――そこは人間、自然と頷きやリアクションの大きい人に集中していってしまうものです。