子のいない夫婦のうちいずれかが亡くなると、残された配偶者が、亡くなった配偶者の親と財産をわけ合うことになります。なかには嫁姑の関係が相続に大きく影響するケースも。本記事では、Yさんの事例とともに子のいない夫婦の相続トラブルについて、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
子のいない夫婦、55歳夫が突然死。義母の口から出た「史上最悪の提案」…6,000万円の遺産をめぐり、涙を堪えた「50歳嫁の返答」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

妻が受け取れるもの

葬儀が終わり、一段落したところで、義母は「一人息子を奪っただけでなく、財産も独り占めするつもりなの」「息子を一人前に育てるまでにどれだけ苦労をしたか、(子どもを育てたことのない)あなたにはわからないわよね」と畳みかけてきます。

 

義母から息子の残した財産を聞かれ、すべて書き出すようにいわれました。一人息子を失った気持ちもわからないわけではないので、妻はいわれるがままに提示しました。

 

・自宅不動産(査定価格3,000万円)
・現預金等(3,000万円)

 

相続財産ではありませんが、亡くなった人の年金の加入状況などによって、妻は遺族年金を受け取ることができます。

 

遺族厚生年金:56万円×5.481/1,000×384×3/4=883,975円
中高齢寡婦加算:61万2,000円
合計:149万5,975円/年(月額約12万円)

 

「あなたはなにもしないでも遺産が入ってきて、年金まで受け取れるなんて図々しい」「あなたと結婚していなければ、私が受け取っていたものでしょう。最後まで私のものを奪うのね」義母の言葉に、Yさんは段々吐き気がしてきました。

遺言書があっても義母はおかまいなし

妻が義母に、生前、夫が遺言書を作成していたことを伝えます。すると「どうせあなたが無理やり書かせたのでしょう」とおかまいなしの様子です。

 

子どもがいない場合、義両親が法定相続人となり、配偶者と義両親の間で法定相続分をわけ合うことになります。この場合、配偶者に3分の2、義両親に合わせて3分の1の法定相続分が認められます。Yさんのケースでは、義母に3分の1の法定相続分あります。すると義母には2,000万円の取り分があると主張してきたのです。

 

遺言書があっても義母から遺留分侵害額請求があれば、遺産の6分の1の1,000万円は渡す必要があるのはインターネットで調べて知りました。ですが、義母からの提案は……。

 

「息子を奪われ、孫も顔をみることもできずに精神的苦痛を受けた。法定相続分だけでは納得がいかない。慰謝料として500万円よこしなさい」

 

義母の条件をすべてのむと、妻に残されるのは家と少しの現金。息子を失った母の想いを汲んだとしても、あまりにもひどい言葉に妻は困惑します。